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「メディカル デザイン アワード」やっちゃいます!

2010/11/05

 僕は、心臓外科医という本業の傍ら、医療安全をテーマにした活動を続けています。

 1つが、昨年立ち上げた「現地・現物・現人主義に基づく医療サービスコンソーシアム 」(3現医療コンソーシアム)。もう1つが、「医療安全プロジェクト」です。

 「3現医療コンソーシアム」は、医療事故発生の過程を人間の行動や思考様式、組織の役割、周辺の環境や社会の影響といった要因にまで踏み込んで検証し、そこで得られた生きた知識を、医療外の業種の方とも共有しながら議論を深めることを目的としています。また、「医療安全プロジェクト」は、危険学で知られる畑村洋太郎先生(工学院大学グローバルエンジニアリング学部機械創造工学科・教授)が発足させた「危険学プロジェクト」で医療安全を担当するワーキンググループ的な位置づけで、シンポジウムの開催を中心に2008年から活動を続けています(関連記事:2010.3.17 「『危険学』が変える医療安全対策」)。

 医療安全プロジェクトではこれまで、電子カルテ、リスクコミュニケーションなどをテーマにシンポジウムを3回開きました。畑村先生のお力添えもあって、毎回かなり濃い内容の議論ができ、参加者の方からの評価もそれなりにいただいています。ただ、「なるほどねぇ」ってことで終わってしまい、その後の具体的なアクションになかなかつながらない…。

 3現医療コンソーシアムも、同じような悩みを抱えています。こうした意義のある活動を継続して実際のアクションにつなげるには世間へのアピールが必要で、そのためにはビジネス化が必要だといわれたりしますが、確かにその通りなのかもしれません。ただ、どうやってスポンサーの協力を仰ぐか?特に一般企業にとっては、医療は何だかよく分からない世界で、下手なかかわり方をすると大きな痛手を負いかねないリスキーなイメージが付きまといます。

 いろいろ考えた末、コンソーシアムの今年の総会で、「コンテストとか、アワードビジネスってどうだろう?」って提案してみました。こうした形であれば、社会の注目も集めやすいですし、医療にオープンなイメージを持ってもらうきっかけにもなり得ます。すると、オブザーバーとして参加してくれていたMedthinkの八村大輔さんが、「僕やる!」って手を挙げてくれました。Medthinkは健康・医療業界のマーケティング・プロモーションを手がけており、以前、広告代理店に勤めていた八村さんには、アワードビジネスでの成功体験もあるそうです。

11月20日に、東京・代官山でお披露目イベントを開催
 コンテストのテーマは、“デザイン”ということに決まりました。ちなみに、ここで言うデザインとは、表面を飾り立てることで美しく見せる行為を指すのではありません。僕が時々お茶をする東京・自由が丘のお気に入りカフェ「nu cafe」のマスターである原田康平さんは、尊敬するデザイナーです。「デザインとは、ある問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現すること。一つの目標にいろいろな人たちが向かっていく時に、それぞれの立場の違いから生じる矛盾を解決するために存在する」。このことを教えてくれたのは彼です。

 原田さんの言うデザインは、まさに医療現場に必要なものです。病院はそもそも危険で汚くて不確かなことがいっぱい存在する場ですが、訪れる患者さんは安全で衛生的で完璧に治療してくれる快適さを求めています。病気を克服するという目的は一緒でも、これほどの矛盾が存在して、それを双方が受け入れられずに戸惑っている医療現場こそ、“デザイン”に大いに活躍してもらうべき舞台なのではないかと思います。デザインを対象にしたコンテストっていうだけで、何だかわくわくします!

連載の紹介

昭和大元教授「手取屋岳夫の独り言」
「最近の日本の医療って、ちょっとおかしくない?」…と愚痴は出るものの、医師という仕事はやっぱり素晴らしい!一外科医として、大学教授として、教育者として感じた喜び・憤り・疑問などを、時に熱く、時には軽〜く、語ります。

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