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iPhoneが僕らを軽くする

2010/11/04
遠矢純一郎、片山智栄(桜新町アーバンクリニック)

僕のiPhoneに入っている医学文献のリスト(一部)。最初からPDFで配布されているものだけでなく、自分で変換したものもあります。

 在宅医療を実践する医師にとって越えなければならないハードルの1つに、「患者からのコールに、24時間365日応える」ことがあります。これはとても難しいことで、24時間体制を維持するには、勤務する医師のライフスタイルを大きく制限しなくてはならない場合もあります。このことが重くのしかかり、在宅医療に踏み出すことを躊躇する人も多いでしょう。

 そこで、病院の宿直当番のように、複数の医師による「グループ診療」の形態をとることで、24時間体勢を実現する在宅診療所が増えてきています。当法人でも、家庭に出向く一般的な「在宅医療」と、老人ホームなどの施設に訪問する「施設在宅」を行っていますが、常勤医・非常勤医合わせて15人ほどの医師で、この2つを支えています。患者からのファーストコールは基本的に主治医が受けますが、夏季休暇や臨時出動が必要な場合などは持ち回りで当番を決めて、回しています。

 そうした体制を構築する上で重要なのは、「何かあった」時に必要な情報にどれだけ素早くアクセスできるかということです。例えば、自分が担当していない患者の対応をする場合、手元に情報がなく、担当医師にも携帯電話で連絡が取れなかったら、困ります。そういった緊急時に素早く対応するための手段やシステムを、あらかじめ準備してくことが在宅医療には求められると思います。

 例えば上記のような緊急事態が15年以上前に起こったら、患者やその家族から現場で聞き出すしか手段がなく、情報不足の中でその場しのぎ的な対応しかできませんでした。その後、携帯電話・PHSやノートパソコンが普及したことにより、外にいてもそれなりに必要な情報へのアクセスが可能となりました。

 ですが、iPhoneをはじめとするスマートフォン登場で状況はさらに変わりました。私はiPhoneを持っていますが、これ1つポケットにあれば携帯電話としての機能だけでなく、iPhoneを介して様々な情報をいつでも閲覧でき、現場でより適切な指示を出すことができるのです。また、インターネットを介してiPhone内で紹介状を作成し、現場から病院や薬局、連携先にメールやFAXを送ることも可能です。

 「ノートパソコンやネットブックでも同じことができるのでは?」という疑問が当然あると思いますが、圧倒的に「手軽さ」が違います。ノートパソコンも従来製品より軽くなっているとはいえ、まだそれなりの重量があり、診療かばんの中でかさばってしまいます。また、片手で簡単に扱える、タッチパネルで直感的な操作が可能、ワンタッチで瞬時に起動できるなど、優れた特徴がたくさんあります(もちろん、ノートパソコンに優位な点は多いですが)。

 そうしたことから、当院ではノートパソコンの携行をやめ、スマートフォンへの移行を進めています。とりあえず、勤務する医師全員にiPhoneを所持してもらい、使用感はどうか、実際の運用で問題がないかなどを確認しているところです。

連載の紹介

在宅医療にiPhoneを!
在宅医療では、スタッフや患者の間の情報共有や、ITを用いた業務の効率化がとても重要。それを米Apple社スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」を駆使し、スムーズなシステム構築を目指す様子をお伝えします。

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