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BMJ誌から
COPDの急性増悪、多すぎる酸素吸入は危険
SaO2 88~92%で調整すると死亡リスクが低下

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪患者に酸素吸入を行う際、動脈血酸素飽和濃度(SaO2)が88~92%になるよう流量を調整すると、流量を調整せずに高流量の酸素吸入を行った場合に比べて、呼吸不全による死亡、呼吸性アシドーシス、高炭酸ガス血症のリスクが有意に下がる―。そんな無作為化試験の結果を、オーストラリアTasmania大学のMichael A Austin氏らが、BMJ誌電子版に2010年10月18日に報告した。

 COPD患者において、酸素吸入によって引き起こされる過酸素症は分時換気量を低下させ、経皮炭酸ガス分圧測定値を上昇させるとの報告がある。また、入院記録を調べた研究では、COPDの急性増悪で入院した患者に対する高流量酸素吸入は、死亡率、入院期間、機械的換気の必要性、高度治療室(HDU)への入院のリスクを高めることが示されている。一方で、流量調整した酸素療法を用いると、アシドーシスのリスクは低下し、補助換気の必要性が減少、死亡率も下がるという報告があった。

 こうしたデータの蓄積により、2008年には世界で始めて、英胸部疾患学会(BTS)が疾患によって異なる動脈血酸素飽和濃度目標域を設定したガイドラインを公表した。だが、それ以降も、COPD急性増悪患者に対する高流量酸素吸入が世界各国で行われている。その理由の1つは、流量調整した方が転帰は良好であることを示す明確なエビデンスがないためだ、と考えた著者らは、救急搬送中の酸素吸入に焦点を当てたクラスター無作為化試験を、オーストラリアのタスマニア州Hobartで実施した。

 06年6月から07年7月まで患者登録を実施。救急要請があった患者のうち、COPDの急性増悪とみなされRoyal Hobart病院に搬送された人々を対象とした。具体的には、35歳以上の、COPD歴を有する可能性があり、息切れを訴える患者で、救急隊員が、急性症状、患者の自己申告によるCOPD歴、10箱・年以上の喫煙歴に基づいてCOPDかどうかを判断した。

 COPDとみなされた患者405人(平均年齢69歳)を登録。これらの患者のうち、214人が過去5年間に肺機能検査によってCOPDと診断されていた(COPD確定例)。

 405人を高流量酸素吸入(226人)、または用量調整酸素吸入(179人)に割り付け、病院到着までこれらの酸素療法を実施した。

 用量調整群には、コンプレッサー式ネブライザーをフェイスマスクと接続して気管支拡張薬を投与し、並行して鼻カニューレを通じて酸素を供給。装着したパルスオキシメーターを用いて酸素飽和濃度が88~92%になるよう流量を調整した。

 一方、高流量酸素吸入群には、非再呼吸(Non-rebreather)マスクを用いて8~10L/分の高流量で酸素を供給。ネブララザーを用いて気管支拡張薬も投与した。

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