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ニトロペンは胸焼けの薬?

2010/11/09

<処方せんの具体的内容は>

50代の女性
<処方 1> 内科
ニトロペン舌下錠 0.3 mg
1錠
頓用・胸痛時
20回分
※その他定期薬(60日分)の記載省略

<何が起こりましたか?>

・来院のたびに、ニトロペン舌下錠<ニトログリセリン>を20回分欲しいという患者に使用状況などを尋ねたところ、食後の胸焼けにも使用していたことが判明した。長期にわたってその誤使用を発見できなかった。

<どのような過程で起こりましたか?>

・患者は高血圧症を合併した安定性狭心症患者で、定期薬とともにニトロペン舌下錠を以前から使用していた。
・患者は定期薬60日分とともに、ニトロペン舌下錠も20回分欲しいと申し出た。
・カルテを確認すると、6カ月前から4回連続でニトロペン舌下錠を処方していた。
・ニトロペン舌下錠の使用頻度が高いと感じたので、患者に残薬や使用状況などを確認したところ、患者は、「週に2~3回使う事がある。一番よく使うときは食後で、特に食べ過ぎた後の胸焼けのため」だと説明した(若い息子家族と同居しているので、脂っこいものが多いが、文句が言えないとのことであった)。

<どのような状態(結果)になりましたか>

・患者にニトロペン舌下錠は食後の胸焼けには効果がないこと、使用は狭心症発作時あるいは、あらかじめ発作が起こると予想される労作(例えば食事、排便、歩行など)の前であることを説明した。

<なぜ起こったのでしょうか?>

・患者の要求に応えて、来院のたびにニトロペン舌下錠を機械的に処方し、体調や薬の使用状況などの確認を怠っていたため、誤使用を発見できなかった。なお、患者がなぜ食後の胸焼けのためニトロペンを使用したかは、不明である。

<二度と起こさないために今後どうするか?>

・頓用の薬剤が処方されている患者に対し、症状や使用状況(頻度、服用間隔など)の定期的な確認を徹底する必要があると感じた。
・頓用薬に限らず、「患者の疾患はどのようなものか」、「なぜ薬を処方したのか」、「服用する薬がどのような作用で効果を発揮するのか」などを分かりやすく説明し、病識や薬識を高めて誤用や服薬意欲の低下を防いでいくことが必要であると感じた。

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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