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JAMA誌から
新生児期の聴覚スクリーニングは難聴児の転帰を向上させる

 出生後すぐに行う新生児聴覚スクリーニングが多くの国で実施されるようになっている。オランダLeiden大学医療センターのAnna M. H. Korver氏らは、生後9カ月前後で行われていた自覚的聴力検査と新生児スクリーニングが、永続的な聴覚障害と診断された小児の3~5歳時の発達に及ぼす影響を比較する研究を行った。その結果、新生児期に検査を実施した児の方が、発達転帰とQOLが有意に良好であることが明らかになった。論文は、JAMA誌2010年10月20日号に掲載された。

 聴覚スクリーニングの実施時期が以前に比べて早められたのは、早期に聴覚障害を検出すれば発達の遅れが抑制できるとの予測に基づいている。だが、これまでのところ、新生児聴覚スクリーニングの広範な実施を支持する強力なエビデンスは提示されていない。

 無作為化試験の実施は倫理的に許されないと考えた著者らは、オランダ国内で、生後2週までに行う新生児聴覚スクリーニングが、生後9カ月前後に実施されていた自覚的聴力検査(詮索反応:音刺激に対して音源方向を詮索する反応を調べる)の代わりに用いられるようになった02年から06年6月までの、地域的な導入時期の差を利用して、これらの検査が発達とQOLに及ぼす影響を調べるDECIBELスタディを実施した。

 同国の新生児スクリーニングは3段階からなっており、最初の2回は耳音響放射(OAE)法を適用、陽性が続いた新生児には自動聴性脳幹反射(ABR)を用いた検査を行い、さらに陽性となった小児を聴覚センターに紹介した。

 自覚的検査も3回行い、3度目の検査で陽性と判定された患者を聴覚センターに紹介した。

 03年1月1日から05年12月31日に生まれたすべての小児を分析対象とした。3~5歳の時点で、永続的な中度以上の難聴(40dB以上が聞き取れない)と診断された小児について発達レベルやQOLを評価した。

 主要アウトカム評価指標は、Child Development Inventoryに基づく全般的な発達と言語能力の発達、MacArthur Communicative Development Inventoryに基づく表出性言語の発達、PedsQL 4.0に基づくQOLに設定。

 試験期間中に誕生した検査可能(新生児ICUに入院していない、認知機能と身体機能に大きな障害がない)な小児のうち、33万5560人が新生児聴覚スクリーニング実施地域に、23万4826人が自覚的聴力検査実施地域に生まれていた。

 追跡期間中に永続的な聴覚障害と診断されたのは、新生児スクリーニング地域の263人(小児1000人当たり0.78)と、自覚的検査地域の171人(1000人当たり0.73)で、差は1000人当たり0.05(95%信頼区間-0.12から0.09)だった。

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