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JAMA誌から
過去10年で小児急性中耳炎の肺炎球菌分離が減少
抗菌薬の効果は中程度、135件の研究の最新レビュー結果(2010.12.8訂正)

 小児の急性中耳炎において、7価肺炎球菌ワクチンPCV7の導入後に原因菌の割合が変化したこと、抗菌薬は偽薬よりは有効だが臨床効果は中等度であることなどが、最新の系統的レビューで明らかになった。米California大学Los Angeles校のTumaini R. Coker氏らが、JAMA誌2010年11月17日号に報告した。

 米国で、小児に対する抗菌薬処方の原因として最も多いのが急性中耳炎だ。急性中耳炎が疑われる小児患者に対して、速やかに正確な診断と適切な治療が行われれば、医療費は削減でき、小さな子供のいる家族の心理的負荷も減るはずだ。

 先に急性中耳炎の診断と治療に関する系統的レビューが行われてから時間が経過し、その間、PCV7が承認され(2000年)、新たな抗菌薬が市場に登場するなど、状況が変化した。そこで著者らは、文献データベース(PubMed、コクランセントラル、Web of Science)に1999年1月から2010年7月までに登録された研究を対象に、小児の急性中耳炎の診断、治療と原因菌に関する系統的レビューを行うことにした。目的は、各診断法の精度の評価、PCV7導入による原因菌の変化、各抗菌薬の利益とリスクなどに関するエビデンスを集めることにあった。

 生後4週から18歳までの小児を対象として、標準的な診断基準を使用しその精度を調べた研究、急性中耳炎の原因菌を分離同定した観察研究や無作為化試験、抗菌薬治療について評価している無作為化試験などを選出。135件の研究が条件を満たした。内訳は、診断精度に関する研究が4件(うち1件は系統的レビュー)、PCV7と急性中耳炎原因菌に関する研究が6件、抗菌薬治療に関する研究が125件だった。3件以上の試験の結果を比較する場合にはメタ分析を行った。

 まず、診断についての情報を4件の研究から収集した。臨床診療で用いられていた診断基準は主に、急性の感染症の症状、中耳の炎症を示す所見、中耳浸出液の存在を指標にしていた。それらの精度を調べたところ、正確な診断と関係していたのは、耳鏡による鼓膜の発赤の所見(陽性尤度比は8.4、95%信頼区間7-11)と、浸出液の存在を示す耳鏡所見(鼓膜の混濁、陽性尤度比は34、28-42、鼓膜膨隆の所見、陽性尤度比は51、36-73、鼓膜の可動性低下、陽性尤度比は31、26-37)だった。

 次にPCV7の導入が原因菌の割合に及ぼした影響を調べた。利用できた研究の多くが、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が分離される割合は有意に減少(急性中耳炎分離株に占める割合はPCV7導入前が33~48%、導入後は23~31%)する一方で、インフルエンザ菌が有意に増加(41~43%と56~57%)したことを示していた。

 また、ワクチンがカバーしている血清型の分離は減り、それ以外の血清型の肺炎球菌の割合が有意に増えたと報告している研究もあった。

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