日経メディカルのロゴ画像

BMJ誌から
妊娠初期のカルバマゼピンは二分脊椎リスクを高める
リスクはバルプロエートの5分の1程度

 妊娠初期の抗てんかん薬カルバマゼピンへの曝露は二分脊椎リスクを高めること、リスク上昇はバルプロエートバルプロ酸)曝露に比べれば5分の1程度であることが、オランダGroningen大学のJanneke Jentink氏らが行った欧州の先天異常登録のデータ分析で明らかになった。論文は、BMJ誌2010年12月11日号に掲載された。

 欧州では抗てんかん薬カルバマゼピンは妊娠可能な年齢の女性に広く投与されている。これまでに行われた複数のコホート研究が、抗てんかん薬の中で最も催奇性が強いと考えられているバルプロエートほどではないものの、カルバマゼピンも主要な先天奇形を引き起こす可能性を持つことを示していた。だが、いずれも小規模研究で、てんかんを有する女性の治療薬選択を助けられるレベルのエビデンスを示せていなかった。

 研究者たちはまず、妊娠初期のカルバマゼピン曝露によるリスク上昇が推定される主要な先天奇形を選出した。文献データベース(PubMed、Web of Science、Embase)から、妊娠初期3カ月のカルバマゼピン曝露と特定の奇形について報告している8件のコホート研究(カルバマゼピンを単剤投与されていた2680人の妊婦を追跡、先天奇形101人を同定)を選び、その中に報告されていた先天奇形の中から、欧州先天異常監視機構(EUROCAT)抗てんかん薬研究データベースが主要な先天奇形に指定しているものを選出した。8件のデータを合わせると、妊娠初期のカルバマゼピン曝露後の主要な先天異常(EUROCATの定義に基づく)の有病率は3.3%(2680人中89人、95%信頼区間2.7%-4.2%)だった。

 EUROCATデータベースは、1995~2005年に欧州の19の集団に見られた先天異常を登録している。380万件を超える妊娠の中からデータベースに登録されたのは9万8075件の先天奇形で、うち8万6291件は非染色体性の奇形、1万1784件が染色体性の奇形だった。

 EUROCAT登録症例のうち、抗てんかん薬非曝露児を選んで主要な先天奇形の罹患率を求め、8件のコホート研究が報告していたカルバマゼピン曝露児の先天奇形の罹患率と比較したところ、カルバマゼピン暴露群で以下の5種類の奇形が有意に多く発生していることが明らかになった:総肺静脈還流異常症(登録1000人当たりの罹患率は、コホート研究では2件、EUROCATでは134件)、口唇裂(口蓋裂合併ありとなしをあわせて、7件対3634件)、横隔膜ヘルニア(3件対766件)、尿道下裂(12件対5418件)、二分脊椎(6件対1933件)。

 次に、これら5種類の先天奇形についてEUROCAT登録症例を対象にケースコントロール研究を実施した。

 ケースは、生産児、死産児(妊娠20週以降の死亡)、出産前診断に基づいて中絶された児の中でこれら5種類の主要な先天奇形を持っていた1万1790人。コントロール1は、生産児、死産児、中絶された児のうち、上記5種以外の主要な先天奇形があった 6万9883人、コントロール2は、生産児、死産児、中絶された児のうちで染色体症候群があった1万1763人とした。

 これらケースとコントロールを合わせた9万3436人のうち、妊娠初期に抗てんかん薬曝露歴ありは516人、カルバマゼピン曝露ありは131人だった。

この記事を読んでいる人におすすめ