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【新薬】トリアムシノロンアセトニド
マキュエイド:眼科手術中に使用する硝子体可視化薬

2011/01/13
北村 正樹=慈恵医大病院薬剤部

 2010年12月24日、眼科手術補助薬のトリアムシノロンアセトニド(商品名マキュエイド硝子体内注用40mg)が発売された。既に本薬は、2010年10月27日に製造承認を取得し、12月10日に薬価収載されている。適応は「硝子体手術時の硝子体可視化」で、用時懸濁して硝子体内に注入する。

硝子体手術とは、硝子体による網膜の牽引を解除したり、黄斑の炎症を助長するサイトカイン等を除去する目的で、硝子体の一部を切除したり、網膜に生じた増殖膜や裂孔を治療する手術である。裂孔原性網膜剥離、増殖性糖尿病性網膜症、黄斑円孔、黄斑浮腫などで実施される。しかし、この硝子体は、透明から半透明のゲルであるため、術中に施術範囲の特定が難しいといった問題があった。

 近年、この硝子体の可視化を目的に眼科領域で広く使用されてきたのが、トリアムシノロンアセトニドである。本剤は、合成副腎皮質ホルモンであるプレドニゾロンの誘導体の一つであり、筋肉内注射用、関節腔内注射用などの各種製剤が各診療領域で使用されているが、硝子体手術で使用される際は、抗炎症作用を期待するのではなく、その物理化学的性質を利用する。

 具体的には、本薬は、難水溶性の白色結晶性粉末で、水中でゲル状物質にまとわりつく性質があるため、硝子体内に注入すると明瞭に視認できるようになる。また、難水溶性であるため、術中に溶解して消失してしまうことがないことも利点である。

 実際、2005年に日本国内で行われた約4万件の硝子体手術について調べた研究では、その67%にトリアムシノロンアセトニドが硝子体可視化を目的で使用されており、有用性が高く評価されていたことが報告されている。

 しかし、既存のトリアムシノロンアセトニド製剤は、硝子体内への投与は認められておらず、また、眼組織に有害なベンジルアルコールなどの添加剤を含有するため、添加剤を含有しない新たな製剤が望まれていた。

 今回発売されたマキュエイドは、こうした眼科領域からの要請に応える形で開発された、添加剤を含有しないトリアムシノロンアセトニド製剤である。本薬の登場により、硝子体手術の短時間化や、術中および術後合併症のリスク軽減が期待できる。

 ただし本薬は、保存剤などの添加剤を含まないことから、用時調製し、調製後は速やかに使用する必要がある。また懸濁液であることから、バイアルからシリンジに吸引する際にバイアルをよく振盪することや、注入前にシリンジを揺すって再攪拌する必要があるなど、使用方法に関して十分に理解しておかなければならない。

 臨床試験では、32例中2例(6.3%)に副作用が確認されており、眼圧上昇と術中低血圧が認められている。また、術後に本薬が眼内に残存しないように除去する必要があること、眼内炎、白内障などが生じる可能性があることなどにも十分な注意が必要である。

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