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BMJ誌から
36週以降の子宮内胎児発育遅延、誘発分娩なしでもリスクに差なし

 出産予定日が近くなった妊婦に子宮内胎児発育遅延が見られた場合、誘発分娩を行った場合と監視しながら待機した場合で、児に対する安全性は異なるのだろうか。オランダBronovo病院のKim E. Boers氏らは無作為化試験を行い、これら2つのいずれを選んでも児のリスクに差はないことを示した。論文は、BMJ誌2011年1月1日号に掲載された。

 著者らは、妊娠36週を過ぎた妊婦に子宮内胎児発育遅延が疑われた場合に選択肢となる(1)誘発分娩(2)監視しながら待機、の影響を比較する多施設無作為化試験DIGITATを、オランダ国内の大学病院8カ所とその他の病院44カ所で実施した。

 04年11月から08年11月まで、頭位単胎児を妊娠し、妊娠週数が36週0日から41週0日で、子宮内胎児発育遅延が疑われ、産科で特別なケアを受けている妊婦650人を登録した。

 子宮内胎児発育遅延は、(1)胎児の腹囲が10パーセンタイル未満、(2)胎児の推定体重が10パーセンタイル未満、(3)妊娠後期3カ月の発育曲線が平坦、のいずれかが認められる場合とした。

 321人を誘発分娩群に、329人を監視しながら待機群に無作為に割り付けた(いずれも平均年齢は27歳)。

 誘発分娩に割り付けられた妊婦には、割り付けから48時間以内に分娩を誘発。

 待機群の妊婦には、胎動回数を毎日記録するよう指示し、2週間に1回、胎児の心拍数測定、超音波検査、妊婦の血圧測定、尿検査、肝機能と腎機能の検査、全血算検査を実施。このグループの妊婦については、必要に応じて担当医が誘発分娩または帝王切開を選択するとした。

 主要アウトカム評価指標は新生児に見られた有害事象とし、退院前に死亡、5分アプガースコアが7未満、臍帯動脈血のpHが7.05未満、新生児ICUに入院を合わせた複合イベントの発生率を比較した。2次評価指標は、手術分娩(鉗子などの器具を利用する経膣分娩または帝王切開)、新生児ICU入院期間、母親の合併症などに設定。分析はintention-to-treatで行った。

 割り付け通りの分娩となったのは、誘発群の306人(95.6%)、待機群の151人(46.0%)で、待機群の166人(50.6%)に誘発分娩が適用されていた。

 複合イベントを経験した新生児は、誘発分娩群17人(5.3%)、待機群20人(6.1%)。差は-0.8%(-4.3%から2.8%)で有意差はなかった。

 複合イベントを構成する項目のそれぞれについて比較しても、有意な差は認められなかった。死産または周産期死亡はなかった。

 あらゆる帝王切開は、誘発群の45人(14.0%)と待機群の45人(13.7%)に適用された。差は0.3%(-5.0%から5.6%)で有意差なし。

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