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BMJ誌から
子宮付属器腫瘍の悪性/良性を予測するルールを作成

超音波検査の結果に基づいて卵巣と卵管の腫瘤が良性か悪性かを手術前に予測するシンプルなルールを、ベルギーLeuven大学病院のDirk Timmerman氏らが作成し、BMJ誌2011年1月8日号に報告した。このルールの精度を前向きに評価したところ、精度は十分に高く、同ルールを適用し診断不確定となった症例のみ、経験を積んだ読影者による主観的な評価を受ける方法が、より正確で効率がいいことが示された。

 子宮付属器(卵巣と卵管)腫瘍に対する術式は、腫瘍が陽性か悪性かで大きく異なる。良性か悪性かを予測するために経膣式超音波検査は有用だが、読影者の経験によって診断精度は異なる。

 超音波画像の読影における経験を人に伝えることは容易ではない。経験が少ない読影者を支援するシンプルなスコアリングシステムとリスク計算モデルを作成する試みは様々に行われてきたが、前向きに評価してみると、既にわが国でも使用されているrisk of malignancy index(RMI)や、国際卵巣腫瘍分析(International Ovarian Tumor Analysis:IOTA)スタディで作成された2通りのロジスティック回帰モデルを含む予測モデルの精度は十分ではなく、グレースケール像とカラースケール像を専門家が主観的に評価する方法の精度を超えてはいない。

 著者らは先に、シンプルで臨床的に有用な子宮付属器腫瘍の悪性/良性識別モデルを作成した。今回は、大規模な集団を対象に、本モデルの精度を前向きに評価するIOTAフェーズ2試験を8カ国の19施設で実施した。

 05年11月から07年10月まで患者登録を実施。経膣式超音波検査を受け、その後120日以内に手術(腹腔鏡手術または開腹術)を受けた女性1938人を登録。平均年齢は46歳、38%が閉経しており、11%がホルモン補充療法を受けていた。

 超音波検査は5年以上の経験がある婦人科医または放射線科の医師が実施。状況に応じて経腹超音波検査などを併用した。検査にはグレースケール(形態学的な評価を行う)とカラードプラー(血流を評価)の両方を用いた。

 著者らが作成した付属器腫瘍が悪性か良性かを区別するためのシンプルなルールは以下の通り。

 *悪性腫瘍の5特徴:不整な形態で充実性のもの(M1)、腹水貯留(M2)、乳頭状構造が4つ以上見られる(M3)、不整な多房性充実性腫瘍で直径が100mm以上(M4)、カラードプラー検査により豊富な血流が見られる(M5)

 *良性腫瘍の5特徴:単房性嚢胞(B1)、最大の充実部の直径は7mm未満(B2)、音響陰影(B3)、滑らかな多房性腫瘍(B4)、カラードプラー像に血流を認めない(B5)

 ルール1:悪性特徴が1つ以上見られて良性特徴が1つも見当たらない場合、腫瘍は悪性に分類

 ルール2:良性特徴が1つ以上見られて悪性特徴が1つも見当たらない場合、腫瘍は良性に分類

 ルール3:悪性特徴と良性特徴の両方が認められる場合と、悪性特徴も良性特徴も認められない場合を不確定とする

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