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BMJ誌から
妊婦血漿のDNA検査がダウン症候群を高精度に検出
本来不要な侵襲的検査の98%が回避可能に

 妊婦血漿中に存在する胎児DNAを分析する出生前診断技術の実用化が進んでいる。香港中文大学Rossa W K Chiu氏らは、ダウン症候群の胎児を妊娠している可能性が高いと判定され、羊水検査または絨毛検査を勧められた妊婦の血漿を対象として、DNAの大規模並列配列解読技術に基づく21トリソミー検出法の臨床的有効性と実用性を確認する研究を行った。その結果、同検出法は感度100%、特異度97.9%という高い精度を示し、この方法を用いれば本来不要な侵襲的検査の98%を回避することが可能と考えられた。論文は、BMJ誌2011年1月22日号に掲載された。

 ダウン症候群の胎児を妊娠している妊婦の血漿中には、胎児の21番染色体由来のDNAが他の染色体由来DNAより多く存在すると予想される。しかし、妊婦血漿中に占める胎児DNAの量はわずかであるため、検出には大規模並列配列解読技術が必要だ。ダウン症候群の出生前診断にこの技術を用いたコホート研究はこれまでに3件行われているが、いずれも非常に小規模な研究だった。そこで著者らは、より多くの妊婦を対象に、ダウン症候群スクリーニング法としてのDNA検査の精度を評価する試験を実施した。

 香港の8施設と、英国1施設、オランダ1施設の出生前診断部門で、08年10月から09年5月まで、条件を満たす妊婦を登録した。また、03年10月から08年9月までに英国とオランダの施設で保管されていた血漿標本(ダウン症候群の胎児を妊娠していた妊婦と、そうではない妊婦由来)を入手した。今回分析対象にしたのは、胎児が21トリソミーを有するリスクが高く、通常のスクリーニングを受けた結果、羊水検査または絨毛検査が必要とみなされて、最終的に核型分析による確定診断が行われた妊婦から集めた血漿標本(保管血漿標本含む)、計753人分。妊婦の年齢の中央値は35.4歳で、採血は中央値13週と1日の時点で行われていた。

 血漿2.0~4.8mLを標本として DNA配列を解読した。解読には処理速度が異なる2つのプロトコル(2-plex:一度に2通りの配列を調べる/8-plex法:同時に 8通りの配列について調べる)を用いた。

 21トリソミー陽性は、21番染色体由来のDNA分子の割合に関するzスコアが3を超えた場合とした。すなわち、個々の標本に含まれる21番染色体由来DNAの割合が、ダウン症候群ではない児を妊娠している女性を対象に測定した21番染色体由来DNAの割合の平均値から標準偏差の3倍超離れている場合を陽性とした。

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