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チャリティーやるなら楽しく!

2011/01/26
提嶋淳一郎

マイアミ動物園内の5kmの道のりを走るMiracle Runの最後尾には、ベビーカーに赤ちゃんを乗せたママさんランナーも。

 皆さん、はじめまして。マイアミ大学の提嶋(さげしま)です。腎膵移植部門で外科医として働いています。アメリカで生活してみると、日本にいた頃は常識だと思っていたことが非常識とされることもままあり、文化の多様性に戸惑うことが少なくありません。そして、私の認識は物事のほんの一面をとらえたものに過ぎなかったということを痛感させられます。この連載では、そんな「井の中の蛙」な私の経験を少しずつつづってみようと思いますので、気楽に読んでいただければ幸いです。

患者が次の患者を支援するTransplant Foundation
 日本を含め北半球の多くの地域では冬本番でしょうが、こちらマイアミではハリケーンシーズンも過ぎて(幸いにもここ数年は、ほとんど被害がありません)ベストシーズンを迎えています。少し前の話になりますが、ある秋晴れの日曜日、マイアミ動物園(Zoo Miami)でチャリティーイベント、Miracle Walk/Runが開かれました。参加者は、動物園内の5kmの道のりを走ったり歩いたり、思い思いにゴールを目指します。

 このイベントの主催者はTransplant Foundation[1]という患者支援(patient advocacy)のNPOです。もともとは地域の移植医療・環境の向上に貢献したいという移植患者たちによって始められ、現在ではマイアミ大学と提携しています。日本の患者会にも似ていますが、アメリカの患者支援団体は、このように地域に根ざした小さなものから全国規模のものまで、様々な目的で作られ多種多様な活動を行っています。Transplant Foundationの場合は、臓器移植前後の患者や家族のサポート、地域の人や学生を対象とした移植医療・臓器提供の普及啓発活動、そして移植医療発展のための研究活動を行っています。

 患者・家族サポートの一環としては、マイアミ大学/ジャクソン記念病院の近くに「トランスプラント・ハウス」を運営しており、遠方から移植のために来た患者と家族に一時的な住まいを提供しています(まだまだ数は圧倒的に足りませんが)。日本でも同様の施設として、子どものためのドナルド・マクドナルド・ハウスが運営されていますので、この種のサポートをご存知の方は多いでしょう。

 ほかにも患者同士の助け合いの場として興味深いものに「Mentor Program」という活動があります。これは、既に移植を受けた患者や家族が一定の訓練を受けた後、別の移植前患者のよき助言者(mentor)となるものです。これからどのようなことが待ち受けているのか不安でいっぱいの患者にとっては、医療従事者からの形式的な説明よりも、既に移植を受けた患者の体験談の方が、何倍も役に立ち励みになることでしょう。

著者プロフィール

提嶋 淳一郎

マイアミ大学外科腎膵移植部門准教授/ジャクソン記念病院外科医

1990年、昭和大学医学部を卒業後、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター外科に入局。96年、同医局助手。98年、膵・膵島移植研究のためミネソタ大学外科糖尿病研究所に研究留学。その後、臨床移植外科研修のため、2002年、マイアミ大学/ジャクソン記念病院にクリニカルフェローとして留学。趣味は、食べること、飲むこと、海や山で遊ぶこと、そして人生を楽しむこと(マイアミはラテンですから)。

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