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JAMA誌から
CABG1年後のグラフト開存率は橈骨動脈でも伏在静脈でも同等

 冠動脈バイパス術CABG)のグラフトとして、左内胸動脈の次に用いるべきは橈骨動脈伏在静脈か。この疑問の答えを得るために、開存率を指標とした無作為化試験を行った米Southern Arizona VA Health Care SystemのSteven Goldman氏らは、両者のいずれを用いても1年後の100%閉塞の発生率には差はないことを明らかにした。一方で、狭窄率75%以上の重症狭窄は橈骨動脈が適用された患者群に多く見られた。論文は、JAMA誌2011年1月12日号に掲載された。

 CABGを受ける患者の多くで、冠動脈の左前下行枝のバイパスには左内胸動脈を、それ以外の血管には伏在静脈を用いる方法が適用されてきた。近年、左内胸動脈グラフトで培われた経験に基づいて、伏在静脈よりも動脈グラフトの方が好ましいのではないかとの考えが広まり、様々な動脈を用いる試みが始まった。中でも、採取が最も容易な橈骨動脈の使用が広まっており、08年に米国で行われたCABGの約6%がこれを用いていた。しかし、橈骨動脈と伏在静脈の開存率を比較した質の高い研究はほとんどなかった。

 著者らは、待機的CABGを受ける患者を、無作為に橈骨動脈グラフトと伏在静脈グラフトに割り付け、1年後の血管造影によるグラフト開存率を比較する多施設試験を、米国内の退役軍人医療センター11施設で行った。

 03年2月から09年2月にかけて、初回の待機的CABGを受ける、弁膜症合併がない患者757人(男性が99%)を登録した。左前下行枝に対するグラフトには可能な限り左内胸動脈を用いた。左内胸動脈が利用できなかった場合と左前下行枝以外のバイパスについて、橈骨動脈グラフトまたは伏在静脈グラフトに割り付けるとし、比較の対象となるグラフトは、患者1人当たり、いずれか一方を1本のみ適用するとした。

 条件を満たした733人にCABGを行った。366人に橈骨動脈、367人に伏在静脈を適用した。術式はオンポンプ、オフポンプのいずれも可とした。

 開存率を調べるグラフト造影は原則として術後1週間と1年の時点で実施した。グラフト閉塞は、グラフト血管の入口部、体部、遠位部のいずれか1カ所に100%閉塞が見られた場合と定義した。

 主要エンドポイントは1年後のグラフト開存率(100%閉塞が見られない患者の割合)に設定。2次エンドポイントはCABGから1週間後のグラフト開存率、術後1年間の心筋梗塞、脳卒中、血行再建術再施行、死亡とした。分析はintention-to-treatで行った。

 実際に割り付け通りのグラフト血管を適用されたのは、橈骨動脈群の332人(91%)と伏在静脈群の362人(99%)だった(P<0.001)。内視鏡的グラフト血管採取は橈骨動脈群の5%、伏在静脈群の20%に行われていた(P<0.001)。また、患者の88%(橈骨動脈群の88%、伏在静脈群の89%)にオンポンプCABGが行われていた。

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