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JAMA誌から
前立腺全摘後1年以上続く尿失禁にも行動療法は有効

 前立腺癌と診断され前立腺全摘除術を受けた患者の生存率は非常に高い。だが、術後に尿失禁を経験する患者は多い。米Alabama大学Birmingham Center for AgingのPatricia S. Goode氏らは、尿失禁が術後1年を超えて継続している患者を対象に無作為化試験を行い、行動療法の有効性を確認した。8週間の介入で得られた利益は、少なくとも12カ月後まで認められたという。論文は、JAMA誌2011年1月12日号に掲載された。

 尿失禁は排尿筋と尿道括約筋のいずれかまたは両方の機能不全により発生する。外科的な治療は有効だが、適応は中等症から重症の患者となっている。また、前立腺全摘を受けた患者の場合、再度の手術を好まないことが多い。

 周術期の骨盤底筋トレーニングが尿失禁の重症度を下げ、尿失禁継続期間を短縮すると報告した研究は複数あるが、術後1年を超えて継続する尿失禁に対する行動療法の有効性を調べた研究はこれまでなかった。そこで著者らは前向き無作為化試験を行い、行動療法の効果とQOLへの影響を評価するとともに、バイオフィードバック療法(患者が骨盤底筋を適切に収縮できるように訓練する)と骨盤底電気刺激(陰部神経を刺激する)を行動療法と併用すると効果がさらに高まるかどうかを調べることにした。

 03年1月から09年6月まで、患者登録を実施。市中在住の51~84歳で、前立腺全摘後に尿失禁が1~17年間続いている男性208人を選んだ。24%がアフリカ系米国人で、75%が白人だった。

 尿失禁のタイプ(腹圧性、切迫性、混合型)と頻度(1週間当たり5回未満、5~10回、10回超)によって患者を層別化してから、無作為に以下の3通りの治療に割り付けた:8週間の行動療法(骨盤底筋トレーニング、膀胱訓練と水分摂取の管理)(70人、平均年齢66.3歳)、行動療法+受診時の2チャンネル筋電図バイオフィードバック療法+自宅での毎日の骨盤底筋電気刺激(行動療法プラス群、70人、66.8歳)、8週遅れて治療開始(対照群、68人、66.9歳)。

 行動療法群には2週間に1回の受診時に指導を実施。初回に尿失禁に関する解剖学的な知識を与え、自宅で1日3回筋肉の緊張と弛緩を繰り返す訓練を実践するよう指導した。また、排尿を途中で止めたり、排尿速度を遅くする方法を教え、生活改善(十分な水分を摂取し、カフェインの摂取は避ける)に関する指導も行った。患者には排尿日誌(排尿時刻と排尿量、尿失禁の有無などについて患者自身が記録する)とトレーニング日誌をつけるよう指示。2回目の受診時には尿失禁のタイプに合わせた訓練を行った。また、2回目以降は、提出された記録を見ながら、訓練の継続とより良い改善を目標とする話し合いを行った。

 行動療法プラス群の患者も2週間に1回受診し、上記と同様の教育や指導を受けた。加えて、受診時にバイオフィードバック療法を受け、自宅でも電気刺激を毎日行った。

 これら介入群の患者には、8週の時点で、その後も自宅で行動療法を実践するよう指導した。効果の持続期間を調べるために6カ月後と12カ月後に受診するよう指示した。

 対照群の患者は、排尿日誌をつけ、2週間に1回受診してそれを提示することを8週まで繰り返した。その後、患者の選択に基づいて、行動療法群または行動療法プラス群と同様の治療を行った。

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