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専門を選ぶときの4つの要素
なぜ、成績の良い学生はスペシャリストを目指すのか?(前編)
(2011.2.17訂正)

2011/01/31
高橋孝志

 これまでアメリカのメディカルスクールについて書いてきましたが、それは医師になるための最初のステップでしかありません。メディカルスクールを卒業すればDoctor of Medicine(MD)またはDoctor of Osteopathy(DO)の学位を得られますが、それだけで実際に医師として通用することはないからです。メディカルスクール卒業後は、各自が様々なファクターを考慮して専門を選び取り、一人前の医師を目指して研修に励んでいくことになります。

専門の選択は医師人生の選択でもある
 最近、日本でgeneral medicineを扱ったテレビドラマ「GM~踊れドクター」が放映されていました。ドラマの中では、アメリカにおいてgeneral medicineはごく一般的な科であるように扱われていましたが、実際は専門分野が非常に細かく分かれています。

 外来の一般的なケースとしては、患者はまずプライマリケアとして自分のかかりつけ医を受診します。プライマリドクターには家庭医、一般内科医、一般小児科医などを選ぶことが多いです。そこで診察を受けた結果、ごく軽度の疾患であった場合のほかは専門医に紹介されることがほとんどです。

 例えば、高血圧、足の捻挫、ニキビを理由に家庭医を受診したとします。家庭医は高血圧に対して降圧薬を処方し、腎機能などをチェックするために採血をオーダーします。足の捻挫に対してはX線撮影をオーダーし、放射線医の画像診断を受けて、場合によっては整形外科医に紹介します。ニキビに対しては薬を処方する場合もありますが、新しい処方に切り替えるときなどは皮膚科医に紹介します。このケースだけでも放射線医、整形外科医、皮膚科医と3つの専門医が関与することになります。

 日本の診療所などでは1人の医師が複数の専門科を標榜していることがありますが、アメリカでは複数の科の専門医になることはほぼ不可能な仕組みになっています。というのは、もともとアメリカの研修期間は日本に比べると長い上に、それぞれの専門科別に独自の研修を受ける必要があるからです。家庭医なら3年、放射線医なら5年、整形外科医なら6年、皮膚科医なら4年といった具合です。つまり、前述のケースすべてを1人の医師が専門医として診るためには、単純計算しても18年の研修期間が必要になるわけです。

 ですから、アメリカでメディカルスクールを卒業して研修先を選ぶことは、その後の専門を選ぶことに直結します。それでは、学生たちはどうやって研修先を選び、自分の将来の専門を決定しているのでしょうか?

著者プロフィール

高橋 孝志

ミネソタ大学放射線科研修医

ワシントン州ワシントン大学で電気工学科学士および修士を取得。2008年にウィスコンシン医科大学を卒業後、ミネソタ州Hennepin County MedicalCenterにて、スーパーローテーション方式である Transitional Yearインターンとして勤務。2009年7月より現職。

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