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Arch Intern Med誌から
肺炎球菌尿中抗原検査は抗菌薬選択の最適化に有用
市中肺炎入院患者を対象とした前向き研究の結果

 成人市中肺炎の治療に肺炎球菌尿中抗原検出検査を用いると、よりスペクトラムの狭い抗菌薬の選択が可能になるなど、抗菌薬選択の最適化に役立つことが明らかになった。スペインBarcelona自治大学のRoger Sorde氏らが行った前向き研究によるもので、論文は、Arch Intern Med誌2011年1月24日号に掲載された。

 現行の米感染症学会のガイドラインは、市中肺炎で入院した患者に広域スペクトラム抗菌薬を使用するエンピリック・セラピー(経験的な治療)を推奨している。同時に、病原菌の特定も重要としている。

 病原菌を同定し、より適切な抗菌薬を選択した方が、コストも有害事象も、抗菌薬耐性獲得のリスクも低下するだろう。しかし、伝統的な細菌学的診断法では、迅速で正確な同定は難しい。

 免疫クロマトグラフィー法により肺炎球菌(S. Pneumoniae)のC多糖体抗原を検出する肺炎球菌尿中抗原検出法は、高感度、高特異度であることが示されているが、成人市中肺炎の治療における有用性は十分に分析されていない。現行のガイドラインも、どのような場合にこの検査を適用すべきなのかを明確に示していない。

 これまでに、重症ではない市中肺炎で、免疫機能が正常な若い外来患者については、この検査が適切な抗菌薬の選択を助けることが前向きの比較試験によって示されていた。そこで著者らは、入院した成人市中肺炎患者の診断と抗菌薬選択にこの検査が果たす役割を明らかにすべく、前向き研究を実施した。

 07年2月から08年1月まで、バルセロナのVall d'Hebron病院に市中肺炎で入院した16歳以上のすべての患者を対象に、この検査の精度と治療への影響を調べた。

 尿中抗原検出にはわが国でも利用可能な「BinaxNOW S.Pneumoniae」を用いた。この検査は濃縮しない尿を標本とし、15分で結果を得ることができる。

 延べ474人(平均年齢64歳)が市中肺炎で入院していた。細菌学的診断の結果に基づいて、血液または胸水から原因微生物が分離された症例を確定例、喀痰から病原菌が分離された症例を高度疑い例とした。

 全体では、80.8%に当たる383人に肺炎球菌尿中抗原検査が適用されていた。陽性は136人(35.5%)。細菌学的検査と尿中抗原検査のいずれかまたは両方によりS.Pneumoniae感染と診断された計171人(36.1%)では、153人(89.5%)にこの検査が行われており、陽性は130人(85.0%)だった。

 それ以外にS.Pneumoniae感染陽性と診断された6人のうち、3人はS.Pneumoniaeが分離された混合感染例で、1人は誤嚥性肺炎だった。残る2人は大腸菌による肺炎で、いずれも重度の免疫不全状態にあり、尿中抗原検査の結果は偽陽性と考えられた。

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