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第4回
日本発のビジョンが生んだ「世界基金」の役目とは

2011/02/14
小松隆一(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)、喜多洋輔(世界保健機関)、江副 聡(国連合同エイズ計画)、鷲見 学(世界保健機関)

写真1 2010年10月、ニューヨークで開催された国際基金の「第3回増資会合」で発言する潘基文(パン・ギムン)国連事務総長(写真中央、UN Photo by Mark Garten)。

 2000年に日本が議長国として沖縄で主催した、「G8サミット」。このサミットの主要議題の1つに、「途上国の感染症問題」を取り上げことは画期的だった。途上国の保健問題が、G8サミットという外交の場で主要議題に上がり、保健外交(Health Diplomacy)という言葉が流行する契機となったのだ。

 このときエイズ・結核・マラリア対策の資金を集め、分配するための機構の必要性が認識され、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金世界基金)」設立につながった。世界基金は「第三世代」のヘルス系国際機関の代表格(連載第1回を参照)であり、パートナーシップ、資金メカニズム、感染症対策への特化など、21世紀初頭のグローバルヘルスのキーワードを先取りしたビジョンを持った組織だ。今回は、この世界基金の活動について、述べていきたいと思う。

世界基金の概要
 エイズ・結核・マラリアを撲滅するために2002年設立された世界基金は、官民の利害関係者が対等に運営に参画する、「パブリック・プライベート・パートナーシップPPP)」機関と呼ばれる。例えば世界基金の理事会は、議決権のある20議席のうち、拠出国中心の「先進国ブロック」10議席と、途上国やNGOからなる「実施国ブロック」10議席が公平に分かれ、PPPを体現している。中でも日本は、単独で理事会に議席を持つ3カ国のうち1つであり(他は米国、イタリア)、大きな発言力を持っている。また日本のNGOも、先進国NGO議席の1つに含まれている。

著者プロフィール

ジュネーブの国際機関に勤務する日本人職員が有志で集まり、持ち回りで執筆していきます。なお、本記事内の意見部分は筆者らの個人的見解であり、所属組織の公式見解ではありません。

連載の紹介

ジュネーブ国際機関だより
WHO(世界保健機関)やUNAIDS(国連合同エイズ計画)などスイス・ジュネーブの国際機関で日々議論されている世界の保健医療(グローバルヘルス)の課題を、現地の日本人職員がリアルタイムに日本の医療関係者に伝えます。

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