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ソーシャルワーカーから病院改革のリーンスペシャリストに
工藤 美和 氏

2011/02/11

  • 工藤 美和 氏 Miwa Kudo, MHA
  • 年齢 : 39歳
  • 現在の職業 : リーチアジア ソリューションズ 代表
  • RGC リーンヘルスケアコンサルテリング アソシエイト
  • 現在の勤務先 : Reachasia Solutions LLC / Rona Consulting Group LLC
  • 出身大学・学部・卒業年度 : 日本女子大学・家政学部・1993年
  • 日本女子大学・社会福祉学部・1996年
  • University of Washington, School of Public health・2002年
  • 臨床専門分野 : ソーシャルワーカー
  • +αの道の種類 : マネジメント、病院経営
  • 現在の仕事の内容:トヨタ生産方式による改善を基礎とするリーンマネージメントシステムを使った病院経営、組織改革のお手伝いをしています。
  • *リーンマネージメントシステム=トヨタ生産方式の改善方法と哲学を基礎とし、産業や組織ごとの目的や特性を最適化させた組織独自の経営手法

何故+αを選んだのか

 ソーシャルワーカーの資格を持っていましたが、患者さんの直接的なケアではなく、患者さんへの情熱を持った医療に関わる人たちが働きやすく、患者さんの安心できる医療現場をサポートすることが自分の仕事なのではないかと考えました。日本では、医療法人で企画の仕事をしており、そこで本格的に医療経営を学び自分に何ができるか知りたいと考えました。

 当時、医療の現場でよく耳にした「コストを下げるから質も下がる」という考え方や「やる気があるほど燃え尽きる」という言葉に違和感を感じ、そんな常識を覆すきっかけを探すために、あえて日本を離れてアメリカで医療経営を学ぶ道を選びました。

どのようにして+αの道に入ったのか

 といっても、留学のためのTOEFLに12回も落ちるような英語の苦手な私にとって、留学はもとよりアメリカの病院での病院経営を仕事にすることは、とても長い道のりでした。

 なにしろヘルスケアシステムが違う上に、英語がわからなくて、、、これまでの人生で一番勉強した日々でした。

 シアトルには以前に訪れたことがあり、とても住みやすい印象で、日本からも近いという理由で、ワシントン大学を選びました。そんな私が当時ワシントン大学に留学中に地元のバージニアメイソンメディカルセンターにサマーインターンとして就職できたことは、運が良かったとしか言いようがありません。

 当時トヨタ生産方式(以下TPS)の病院経営への取り入れ初期段階だったバージニアメイソンにとっても、新しい病院経営を見て学びたかった私にとっても、The right PERSON in the right PLACE at the right TIMEだったと思います。 現在はバージニアメイソンを辞め、アメリカでの病院のリーンコンサルタントをしながら、日本にリーンマネージメントメソッドを紹介し、サポートする仕事をしています。

 長い間、「患者を中心にした質の高い医療=働きやすく、自己実現できる環境」をイメージしていた私にとって、「リーン」というTPSの哲学/マネージメントメソッド、バージニアメイソン、指導くださった日本の改善の先生方との出会いは運命的であり、これこそ医療経営の未来だと思いました。また当時の社長であり、メンターであり、フェローとしてチャンスをくれたロナ氏との出会いも、私が現在の仕事をLIFE WORKにすることを決心した理由です。

+αの道はどうであったか、何を学んだか

 アメリカの医療経営の世界は、日本とはもちろん土壌が違います。多くの管理部門のマネージャーが各部署で日常の管理から戦略の執行などを行っています。財務やマーケティングなどの専門性の高いスタッフがチームとして常務するところなどは、日本の小さな企業よりもよほどビジネスですし、個人の経営的な資質(問題発見力、解決力、運営管理力)も前提条件として求められます。

 このような市場のニーズを受けて、大学教育や継続教育でビジネスを学びたいという人のための医療経営コースやMBAも整備されていますし、職場環境として医療提供者と管理スペシャリストたちがパートナーとして病院を経営する利点が一般的に受け入れられ、評価もされています。

 こういった違いを差し引いても、アメリカの経営に共通する「個人判断」に依存しない「チーム=個人能力の相乗効果による効率化」でのアプローチは医療現場や経営現場など、日本医療の多くの場面で今後積極的に取り入れて行くべきなのではないかと思います。今でこそ世界的に有名になったバージニアメイソンのリーンも現場チームでの取り組みがあったからこそ、今日の姿があるのです。

 また、しくみの違い、専門性の違いに捕われすぎずに、自分の住む世界の外から何かヒントになるものを盗み取るという姿勢も、学ぶべきところだと思います。

 バージニアメイソンでのトヨタ生産方式の哲学と手法、病院内でのアプリケーションは、まさに私の求めていたものでした。

 リーンやTPS改善は、日本にいたときの医療現場での寂しい「常識」を覆し、情熱のある医療人が自ら理想を実現するための現場で改善を進めることを実現するメソッドです。また患者に安心と最高のアウトカムを提供するために「進化」し続ける強い組織を作るためのシステムでもあります。このように、リーンとヘルスケア、そして組織経営の知識と、それらを組み合わせた経験があることは、私の強みになっていると思います。

今後どのようにキャリアを形成していくか

 「人々の健康」への思いは世界共通です。「リーチアジア(アジアと結ぶ)」の名の通り、日本、そしてアジアの医療とアメリカのリーンの実践の架け橋をすることで、お互いが学び合い質の高い医療の実現を支えていきたいと考え、今年の夏、日本アジア市場向けにソリューションプロバイダとして起業しました。

 同時に、アメリカ国内では医療現場の改善と病院改革の実践をサポートするべく、元上司、同僚と共にリーンと病院改革のコンサルティングとして活動を続けています。ここでの経験と人とのつながりが、今後のリソースになると考えています。

 この仕事は一人ではできない仕事です。私の早急の課題は、アメリカだけでなく、日本でも病院でのリーンの実践を紹介し、同じような意思を持つ日本国内の仲間を見つけて繋いでいくことです。

医療従事者へのメッセージ

 これからの日本の医療は今日の続きではない、明日を作れるリーダーを求めています。個人的には、そんな明日を作る若いリーダーたちに、是非アメリカの病院のリーダーたちの前向きな実行力とバランス感覚を見て習って欲しいと思います。実際の医療のアプリケーションは違っても、リーダーとしてどうVisionを描くか、考え方や態度は、学ぶことがたくさんあるように思います。

 「夢を描き、それを実現するための手がかりを広い世界に求め、実行する。待っているのではなく、飛びながら学びなさい。」という元上司の言葉があるからこそ、今の私があると思います。

ブログ・ホームページなど
http://www.reachasias.com/index.html
http://www.linkedin.com/pub/miwa-kudo/26/876/a64
著書など
病院組織のマネジメント (3章)

 

※「臨床+α」の詳細はこちらをご参照ください⇒http://rinsho-plus-alpha.jp/

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