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季節性インフルエンザの流行、2010-11年度シーズンの傾向を読み解く
和田眞紀夫(わだ内科クリニック院長)

2011/02/22

 2009年の夏、新型インフルエンザが猛威を振るってから早くも1年以上の月日が流れ、2010-2011年度シーズンも中盤にさしかかった。過去の新興インフルエンザの流行パターンの検証から、A/H1N1、2009年新型インフルエンザも翌シーズン以降に第2波、第3波の流行を引き起こすと予想され、今年度のワクチンもいわゆる新型インフルエンザにも効果のある3価ワクチンが作られた。しかし、実際の今年のインフルエンザの流行がどうなるかは誰にも予想できなかった。

 第2波といわれる流行が本当に訪れるのか、訪れるとすれば昨シーズンに新型に罹患した人が再び罹患する可能性があるのか、新興インフルエンザがどのようにして季節性インフルエンザとして取り込まれていくのか。このような疑問に対して一つ一つ解析して検証していくことは、来るべき強毒性新型インフルエンザに備える上でも重要なステップだと思われる。そして、本来このような作業は疾病対策センターのような組織によって包括的に行われるべきものであるのだが、残念ながらそのような動きは今のところ見えてこない。

 日本ではあまり報道されなかったが、昨秋から年末にかけてA/H1N1、2009ウイルスがイギリスで猛威を振るった。一時は救急入院施設が不足して隣国に患者さんを転送せざるを得ない状況にまで追い込まれていた。そのころ日本ではA香港型季節性インフルエンザの散発的な流行が全国的に見られていたが、年が明けてからはA/H1N1、2009ウイルスが優勢となって都市部を中心として中規模な流行が見られるようになった。

 東京の住宅衛生地区に位置する当院(わだ内科クリニック)においても、1月の中旬に流行のピークをみて1週間のインフルエンザ罹患者数が50を越え(現場の実感としては定点観測医療機関の実数をはるかに越える患者さんがより早い時期に訪れる)、2月に入ると早くも収束の兆しが見え始めている。今日は今シーズン初めてインフルエンザB型陽性の患者さんを診た。練馬区の定点観測データもインフルエンザB型の急速な広がりを示しており、新たな展開を見せ始めているところである。

 ところで、最初の疑問、今シーズンにA/H1N1、2009に罹患した人は昨シーズンにもこのウイルスに罹患した人なのかどうかということ。当院での患者さんのデータ解析からわかった答えはNOであった。今シーズンでこれまでにインフルエンザに罹患した人の何と98%が少なくともここ数年はインフルエンザにかかったことがない人たちであった(診察時の問診によって確認)。今シーズンのワクチンを接種していなかった人の割合は75%に上り、圧倒的に大多数の患者さんがワクチンを接種しておらずかつ新型インフル罹患歴のない人たちであった。

 この結果から言えることは新興インフルエンザの第2波というのは、第1波で感染を免れた人が新たに罹患するものであり、有効なワクチンの接種が明らかに効果を発揮しているということである。去年流行の中心だった中学・高校生にほとんど罹患者が認められず、逆に去年感染が少なかった若年成人の罹患者が多く、65歳以降の高齢者の罹患者は昨年同様皆無というのが現状だ(この年齢層はもともとA/H1N1、2009に対する抗体を保有しているというのはどうも本当らしい)。

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