日経メディカルのロゴ画像

国への賠償請求は棄却
イレッサ訴訟、アストラゼネカへ約6000万円の賠償命令

 非小細胞肺癌治療薬であるゲフィチニブ(商品名イレッサ)の副作用で死亡したなどとして、遺族や患者が国とアストラゼネカに対し損害賠償を求めていたイレッサ訴訟で、大阪地方裁判所(高橋文清裁判長)は2月25日、製造物責任法上の指示・警告上の欠陥があったなどとして、アストラゼネカに約6000万円の賠償を命じる判決を出した。国への賠償請求は棄却した。

 裁判の争点となったのは、2002年7月にゲフィチニブが承認された際、間質性肺炎への注意喚起が十分であったかどうか。承認時の添付文書では、「重大な副作用」欄の4番目に頻度不明の副作用として間質性肺炎を挙げ、「異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと」などと記載されていた。

 判決で大阪地裁は、ゲフィチニブの有効性を認めつつ、国内の治験において、承認用量の倍量に当たる500mg群に割り付けられた被験者が間質性肺炎を発症していたことや、海外の副作用報告の中に間質性肺炎と診断された例があったことなどから、承認時に致死的な間質性肺炎を発症する危険性を認識できる可能性があったとした。

 その上で、アストラゼネカに対しては、致死性の間質性肺炎について警告欄に記載して注意喚起を図るべきだったなどとして、製造物責任法上の指示・警告上の欠陥があったと認めた。ただし、国に対しては、承認時の添付文書に間質性肺炎についての記載を盛り込むようアストラゼネカに指示していたことなどから、承認前後の安全性確保について、国の対応が著しく合理性を欠くものとは認められないとして、国家賠償法上の責任はないとした。

 今回、アストラゼネカに賠償を命じたのは、間質性肺炎について緊急安全性情報が出された02年10月15日までにゲフィチニブを服用して死亡した患者2人と、現在も生存している患者1人。10月15日以降に服用して死亡した患者1人については、損害賠償請求を退けた。

 判決を受けて原告弁護団の水口真寿美氏は、「承認時の注意喚起が不十分だったと認められたことは満足だが、国の責任が認められなかったのは不当だ」との見解を示した。今後については、「原告1人の訴えが退けられているので控訴せざるを得ないのではないか」としつつも、「和解拒否の際に、国は問題点が整理されたらそれを踏まえて対応するなどとしており(関連記事:2011.1.28「政府、イレッサ訴訟の和解勧告を拒否」)、今回の判決で問題点も整理されたのだから、全面解決に向けた協議に入るべきだろうと思っている」と述べ、控訴審だけが解決に向けた議論の場になるとは考えていないと強調した。

この記事を読んでいる人におすすめ