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NEJM誌から
農場暮らしの小児は喘息リスクが低い
曝露微生物の種類が多いほどリスクが低下、中欧での研究結果

 様々な微生物に曝露するような環境、例えば昔ながらの農場などで育つ小児には、小児喘息アトピーが少ないことが知られている。独Munich大学小児病院のMarkus J. Ege氏らは、中央ヨーロッパで行われた2件の研究に登録された小児について分析し、農場で生活することによる環境微生物曝露と、喘息、アトピーの有病率の関係を調べた。その結果、農場暮らしの小児はより多様な微生物に曝露しており、その種類が多いほど喘息リスクは低いことを示した。論文は、NEJM誌2011年2月24日に掲載された。

 これまでに行われた同様の研究は、微生物曝露のマーカーであるムラミン酸(細菌の細胞壁のみに存在する)や細菌内毒素の値を指標に、曝露が喘息、アトピーの有病率と逆相関することを示していた。今回著者らは、農場暮らしに関連する微生物曝露についてより正確に評価した上で、家族経営の農場に暮らす小児と、同じ地域に居住するそれ以外の小児(参照群)を対象に、微生物曝露の多様性と喘息、アトピーの有病率の関係を分析しようと考えた。対象に選んだのは、下記の2件の研究に登録された小児だ。

 南ドイツの小児を対象とするPARSIFAL(Prevention of Allergy - Risk Factors for Sensitization in Children Related to Farming and Anthroposophic Lifestyle)は、対象となった6~13歳の小児6843人のうち801人について、掃除機を用いたマットレスからのハウスダスト採取が試みられていた。分析に適した量が入手できた489人に由来する標本から、一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)解析法を用いて細菌DNAを検出した。489人の52%が農場住まいであり、この集団の喘息の有病率は8%だった。

 ドイツ南部、オーストリア、スイスを含むバイエルン地方の小児を対象とするGABRIELA(Multidisciplinary Study to Identify the Genetic and Environmental Causes of Asthma in the European Community [GABRIEL] Advanced Study)では、対象となった6~12歳の小児9668人のうち、南ドイツ在住の小児444人の部屋から静電式集じん器を用いて沈積ダストが採取されていた。これらに培養法を適用して特定の細菌と真菌を検出した。444人の16%が農場住まいで、この集団の喘息の有病率は11%だった。

 どちらの研究でも、質問票を用いて、呼吸器症状やアレルギー症状の有無、喘息と診断されているかどうか、生育過程における曝露状態、交絡因子候補に関する情報を収集していた。アトピーかどうかは、ヤケヒョウヒダニ、ネコアレルゲン、カバノキの花粉(GABRIELA研究)、3種類の花粉(PARSIFAL研究)に対するIgE値を測定して判定した。

 2件の研究はいずれも、参照群の小児に比べ農場生活小児群で喘息とアトピーの有病率が低いことを示した。参照群と比較した農場生活群の喘息の調整オッズ比は、PARSIFAL研究が0.49(95%信頼区間0.35-0.69)、GABRIELA研究では0.76(0.65-0.89)。アトピーの調整オッズ比はそれぞれ、0.24(0.18-0.34)と0.51(0.46-0.57)だった。

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