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BMJ誌から
適度な飲酒は心血管イベントリスクを減らす

 適度な飲酒が心血管保護効果をもたらすことを示したいくつかの観察研究の結果に関心が集まっている。カナダCalgary大学のPaul E Ronksley氏らは、最新の研究結果も組み込んで、飲酒が心血管アウトカムに及ぼす影響を調べる包括的システマティック・レビューとメタ分析を行った。この結果、アルコール摂取量が2.5~14.9g/日の人々では、心血管死亡、冠疾患罹患、冠疾患死亡、脳卒中罹患、脳卒中死亡のリスクがすべて非飲酒者より有意に低いことが分かった。論文は、BMJ誌2011年2月26日号に掲載された。

 著者らは、Medline、Embaseに09年9月までに登録された研究を中心に、学会発表の記録なども含めて、飲酒と心血管死亡、冠疾患罹患(致死的または非致死的心筋梗塞、狭心症、虚血性心疾患、冠動脈血行再建術施行)、冠疾患死亡、脳卒中罹患(虚血性または出血性)、脳卒中死亡との関係を評価している前向きコホート研究を探した。

 4235件の研究から条件を満たす84件を選んだ。34件(40%)は男性のみ、6件(7%)は女性のみ、44件(52%)は男女を対象としていた。追跡期間は2.5年から35年で、平均は11年だった。

 メタ分析の参照群は、これまでの生涯で一切飲酒をしていない人々(生涯非飲酒者)とした。飲酒量は、アルコール摂取量が約12.5gとなる、355mLのビール1缶または1瓶、グラス1杯(148mL)のワイン、グラス1杯(44mL)の蒸留酒(40度)を基準(1ドリンク)とし、飲酒者を、1日のアルコール摂取量が2.5g未満、2.5~14.9g、15~29.9g、30~60g、60g超の5群に分類した。

 プール解析を行い、ランダム効果モデルを用いて、生涯非飲酒者と比較した飲酒者の心血管イベントの調整相対リスクを求めた。

 心血管死亡について分析していたのは21件の研究で、飲酒者の相対リスクは0.75(95%信頼区間0.70-0.80)となった。冠疾患罹患については29件の研究が評価しており、相対リスクは0.71(0.66-0.77)、冠疾患死亡は31件の研究が報告、相対リスクは0.75(0.68-0.81)、脳卒中罹患は17件で相対リスク0.98(0.91-1.06)、脳卒中死亡は10件の研究で相対リスク1.06(0.91-1.23)となった。

 脳卒中罹患を出血性と虚血性に分けて分析すると、相対リスクはそれぞれ1.14(0.97-1.34)と0.92(0.85-1.00)になり、出血性脳卒中のリスク上昇傾向と虚血性脳卒中のリスク低下傾向が見られた。この結果について著者らは、アルコールの抗血栓作用が影響しているのではないかと考えている。

 次に、飲酒量とリスク低減の間の用量反応関係を分析した。

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