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京大カンニング事件で考えた

2011/03/09

 京大入試のまさに真っ只中、試験問題がネットに流出し、時間内にネット上で解答まで出るという事件は、私たちに大きな衝撃を与えました。3月8日現在、東北出身の19歳予備校生という「犯人」も逮捕され、「犯人」からは、数学記号を辞書登録した携帯を股に挟んで左手で打っていたという供述も得られているとのことです。

 私たちが受けた衝撃の内容は大別して2つです。1つは大学、しかも京都大学という受験生憧れの「聖域」および勤勉な受験生の「営み」そのものが、卑怯な方法で汚されたという“怒り”に近い感情。もう1つは、大学の教官世代が一番苦手とするIT機器を20歳前後の若造がいとも簡単に操って、まるで「下剋上」のような鮮やかな所業をやってのけたことに対する“快哉”に近い感情。

 「入学試験は自分の人生をかけた最初の試練。切迫した気持ちは分かるが、不正を働くのは断じて許されない」。中野寛成・国家公安委員長はこう話したようですが、世間の一般的な見方もこんなものでしょう。

 中には、「それにしても携帯とは何なのか。北アフリカ・中東では激動の陰の主役になっている。八百長相撲でも一役買った。そして、ほとんど不可能なはずの密室破りの道具でもある。どこにでも顔を出し、とてつもない可能性と危うさを併せ持つこいつの正体を、実はまだよく分かっていない」(3月4日付日本経済新聞朝刊「春秋」)という一歩踏み込んだ意見や、「世の中はものごとが進んだ。携帯の持ち込みを制限するほどの措置を講じなかった大学当事者の方が時代に遅れている。日本で初めて入学試験で携帯を使い、カンニングをやったというのは見上げたもんじゃない。ある意味学校の方がバカ。そういう時代になった」(石原慎太郎・東京都知事)と、数歩踏み込んだ(?)意見もありました。

大学学内の試験は「カンニングし放題」
 私たちが受験生の頃(1970年代)、京大入試は確かシャープペンシル禁止でした。当時のことですから、恐らく、シャープペンシルの中に小さく折りたたんだカンニングペーパーをしのばせていた受験生がいたのでしょう。今の京大受験生に聞くと、今はシャープペンシルも自由だそうです。しかし、今回の事件をきっかけに、京大に限らずどの大学も、受験時にはシャープペンシルや携帯電話をはじめ、あらゆる機器類のチェックが厳しくなると思われます。

 秋葉原に行くと「盗撮グッズ」のコーナーがあります。そこにはシャープペンシルなどの筆記用具や、メガネのフレームに取り付けられた小さなカメラが並べられています。その種の業者でもなければ、中年の私たちにはどこにその隠しカメラがあるのかもわからず、当然うまく使いこなすこともできません。しかし、ネット世代の若い人たちにとっては造作もないことでしょう。実際、秋葉原で手に取って「うん、うん」とうなずきながら見ているのは若者たちばかりです。

 大学生に聞くと、どこの大学でも学内での試験は、監視が緩いこともあって、そうした道具を使ってのカンニングはし放題とのことです。私たちも学生の頃は“代返”もしたし、試験の前はカンニングペーパーも作りました。不良が売り物だった石原都知事も、今回の発言を聞く限り、また初期の作品を見る限り、若い頃は平気でやっていた気がします。

ジャスミン革命で中国がそれほど揺れないワケ
 1986年に私が米ペンシルベニア州のピッツバーグにあるカーネギーメロン大学(CMU)に留学していた頃、アジアの留学生の中でひときわ勉強熱心なのが、中国からの留学生でした。

 勉強熱心というより、何事においても情熱的かつ強引で、身なりや格好は一切構わず、授業中に誰かが先生に質問をしていても、平気で割り込む。その態度は、今から思えば、先の尖閣諸島領海侵犯・船体体当たり行為に通じるものがあるようにも感じます。日本にいた頃、どちらかと言えばそうした態度は在日韓国人・朝鮮人の方が目立っていて、在日中国人はおとなしい印象だったので、意外と言えば意外でした。当時、私は韓国人留学生たちと「あれはひどいよね。到底友達にはなれないよな」と一緒に愚痴っていました。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

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すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
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