東北太平洋沖地震の発生に伴い、宮城県に10人の医療スタッフ(医師6人、物資調達管理調整員3人、看護師1人)を派遣している「国境なき医師団」は3月14日に会見を開き、同医師団日本会長の黒崎伸子氏が被害状況や被災者の様子などを語った。同氏は地震発生翌日の12日から仙台市内の2箇所の避難所で被災者の診療に当たり、14日に任務を終え帰京した。
同氏は会見の席上、今回の地震は津波の影響が大きかった点を指摘。「生きるか死ぬかの明暗がはっきりした印象を持った」と話した。
こうした状況下で、少なくとも仙台市内では急性期医療のニーズはほぼ満たされており、病床に比較的余裕のある病院が多かった状況を説明。「外傷患者が押し寄せる感じではなかった。各病院が軽症、中等症、重症、透析患者のいずれを受け入れるか役割分担ができており、救急隊が電話応対でトリアージして該当の病院にスムーズに搬送されていた」(同氏)という。
一方で、慢性疾患を持つ被災者の健康状態を不安視。被災者の中には多数の薬剤を服用している高齢者などが少なくなく、薬品の在庫を考えて処方薬や量を決めるのに苦労したほか、血糖チェックをせずにインスリンを処方していいかどうかの判断に迷ったという。
備品については、人工透析用の生理食塩水と在宅酸素が不足しているという。一方、外傷患者がそれほど多くないため手術はあまり実施されておらず、手術関連の備品などにはまだ余裕があるとの印象を語った。このほか、被災のショックを受けた住民への精神的ケアの必要性や、電気や水道、通信などのライフラインの断絶の早急な改善を訴えた。
診療所に関しては、どこのクリニックが診療可能なのかはまだ把握されていない状況だという。ただ、「14日には開業する診療所が目立ってきており、今後、地区医師会がこうした動向を把握して情報の公開に努めていくだろう」と期待を寄せた。
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