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大震災の現場から Vol.2
「死者は積み上がっても、助けられる傷病者が発見できない…」
DMATの一員として仙台で活動を行った医師からの報告

2011/03/16
東京医科歯科大学助教 白石淳

 「3月11日18:34 これから被災地に向かいます」―。自身のFacebookにこう投稿し、DMATの一員として仙台に赴き、活動を行った東京医科歯科大学助教の白石淳氏。DMAT(Disaster Medical Assistance Team、災害派遣医療チーム)とは、医師、看護師、業務調整員で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、おおむね48時間以内の急性期に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チーム。医師の目から見た被災直後の仙台の医療現場の様子、DMATとの隊員としての活動内容など、白石氏がFacebookページにつづった報告を本人の許可を得て掲載する。



●2011年3月11日 18:34
これから被災地に向かいます。

●2011年3月11日 20:57
無人の東北自動車道を移動中です。現地はなかなか遠いです。

●2011年3月12日 17:54
仙台市にいます。我々の活動拠点のある西側はライフラインこそやられていますが、家屋の倒壊はなく、これが未曽有の大地震の被災地かと目を疑うような平穏な風景です。手をつなぐ親子やカップルが普通に歩いています。

ところが、東側の海に面した辺りは悲惨です。津波になぎ倒されて水没し、瓦礫(がれき)の山で、火災が発生し、ご遺体が多数発見されているようです。救助隊も、交通の寸断と二次災害の恐れのため満足に活動できません。

死者は積み上がっても、助けられる傷病者が発見できない、実に歯がゆい状況です。発見されるのは、死体か元気な人かのどちらかなのです。これは地震というよりも津波だ。津波は一度巻き込まれるとほとんど生存できる可能性のない、恐ろしい災害です。数百名規模の、おそらく今までで最大規模のDMAT(Disaster Medical Assistance Team)が活動しています。が、実際に救命可能な人は、皮肉なことに少ないです。

●2011年3月13日 10:33
新たに来る外傷はほぼいなくなりました。一方で、疾病は急増しています。災害のストレスや、ライフラインの破壊による生活環境の悪化ももちろん原因ですが、なんといっても住処(すみか)を失った人の急病が増えています。車内生活者の肺塞栓症(エコノミー症候群)も来ました。

被災地に今必要なのはもちろんすべてですが、多数の避難者への住環境整備が最優先だと思います。支援をしていただける方、最高に必要なものはおそらく寄付です。

●2011年3月13日 16:43
仙台で車内生活者の心肺停止例、おそらく重症肺塞栓症を診療しました。中越地震の時も多数例発生しています。震災被災地に早急に仮設住宅を設置するなど、「住」を提供することが急務です。

●2011年3月13日 16:56
私の高校の友人たち、医師の仲間たち、その他の大切な友人の皆様に、社会的に成功して裕福な仲間たちに率直にお願いをします。東北地方の広域で生活物資が不足しています。活動中に、食料品やガソリンを求める長蛇の列を幾度となく目撃しました。

被災者のために寄付をしてください。

生活物資や仮設住宅は、すべての被災者を、特に高齢者、子供、家を無くした被災者などの社会的弱者の命を守ります。もちろん私もそうします。

●2011年3月13日 22:51
仙台から撤収中です。移動の強行軍、診療、空腹、睡眠不足、風呂に入れない顔も洗えない、雑魚寝、欲しいものの何一つ手に入らない苦しい生活でした。

私は短期間でしたが、被災地の人たちはこれが何週間も続きます。しかし、地元の皆さんは、この悲劇と苦境のなかで、たくましく明るく感謝の気持ちに溢れて暮らしています。「東京DMAT」のロゴが入ったユニフォームを見て、何度も「遠くからありがとうございました」と声をかけられ、こちらがじんときました。宮城県が大好きになりました。

(これより先は、白石氏がDMAT活動より戻った後にFacebookに投稿した報告です)

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