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ライフライン断絶下の周産期医療に奮闘する医師より

2011/03/16

 茨城県水戸市で産婦人科を開業されている石渡勇先生(石渡産婦人科病院院長、茨城県産婦人科医会会長)から、ライフラインの途絶えた被災地での周産期医療の現状報告と行政への要望をお預かりしました。ご本人の了解を得て、ご紹介したいと思います。

 石渡先生とは、2007年に開催された日本のお産を守る会 第一回シンポジウム「産科医療の崩壊と再生 ―日本のお産を守るために今、何をなすべきか?―」でご一緒しました。忙しい産科診療の合間を縫って、日本の産科医療全体のことを考え行動されている方です。

 今回の大震災で被災され、東京の知人が先生の身を案じて震災当日にメールを送ったところ、3日後の14日にこんなお返事が来たそうです(編集部注:元の文章の主旨が変わらない範囲で、一部編集してあります)。

 心配をかけました。電気・ガスなど主要なライフラインは昨日夕方復旧し、本日は水道が細々ではありますが供給されています。

 11日午後3時前の突然の大地震の際は、外来業務中でしたが、ただただ机にしがみついていた状態で、患者と新生児とともに従業員の車に分乗し、そのまま2時間を過ごしました。自家発電は9時間で止まり、軽油の備蓄もなく、暗く寒い夜を過ごしました。夜中に懐中電灯で分娩しました。

 14日午前零時30分、東京の同級生が新鮮な野菜、果物を8時間かけてタクシーで届けてくれました。全国から激励の電話もいただき感謝感謝です。また、地元茨城県の医療供給体制確保のために、茨城県医師会および会員とともに頑張らなければなりません。

 周産期救急の体制は何とか確保しました。茨城県医師会にも救急対策室ができましたが、医師会本部にも電気の供給がなく、メールも、今やっと私個人のメールが使えるようになったところです。今までは、書斎の両側に天井まである本棚から膨大な資料が雪崩のように落ち、机もパソコンも埋もれて見えない状況でした。病院の機能もほぼ復活し、自宅の片づけをしています。昼にはみずから80kgの米を買ってきました。

 病院の患者も従業員も家族も皆無事であったことは何よりありがたいことでした。しかしながら、宮城や岩手、お隣の福島の惨状を見聞きしますと、まずはこれらの被災地への救援活動を先にすべきとの思いです。また連絡します。

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著者プロフィール

吉田穂波(ハーバード公衆衛生大学院リサーチフェロー)●よしだ ほなみ氏。1998年三重大卒後、聖路加国際病院産婦人科レジデント。01年名古屋大学大学院。ドイツ、英国、日本での医療機関勤務などを経て、08年ハーバード公衆衛生大学院。10年より現職。

連載の紹介

吉田穂波の「子育てしながらハーバード留学!」
米国ハーバード公衆衛生大学院で疫学の研究に従事する吉田穂波氏が、日米を往き来しながらの研究生活、子育て、臨床現場への思いなどを、女性医師として、産婦人科医として、4人の子の母親として、肌で感じたままにつづります。

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