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NEJM誌から
急性非代償性心不全へのループ利尿薬、投与法や用量による差は?

 急性非代償性心不全で入院した患者へのループ利尿薬投与において、ボーラス静注(急速静注)でも持続静注でも、高用量でも低用量でも、患者の自己申告による全般的症状の改善レベルに差はない―。そんな知見が、米国立心肺血液研究所(NHLBI)心不全臨床研究ネットワークの研究者たちが行った前向き無作為化試験Diuretic Optimization Strategies Evaluation(DOSE)で得られた。米Duke大学のMichael Felker氏らが、NEJM誌2011年3月3日号に報告した。

 急性非代償性心不全は65歳以上の人々の入院の主な原因の1つだ。長年にわたって、この種の患者の多くにループ利尿薬の静脈内投与が行われてきたが、実は、最適な使用法を手引きする前向き研究由来のデータはほとんどなく、現行のガイドラインは主として専門家の意見に基づいて作成されている。ゆえに、日常診療で用いられるループ利尿薬の投与法と用量は施設ごとにまちまちになっている。そこで著者らは、こうした患者へのループ利尿薬の最適な投与法と好ましい用量を明らかにするため、二重盲検試験DOSEを行った。

 08年3月から09年11月まで、米国とカナダの26施設で患者登録を行った。症状発現から24時間以内で、症状(呼吸困難、起座呼吸、浮腫のいずれか1つ以上)と徴候(ラ音、末梢浮腫、腹水、肺血管のうっ血のいずれか1つ以上)が認められ、急性非代償性心不全と診断された入院患者のうち、慢性心不全歴があり、入院前1カ月以上にわたってループ利尿薬の経口投与(フロセミドなら80mg~240mg、それ以外の利尿薬ならフロセミド相当量)を受けていた人々を選んだ。左室駆出分画については組み込み条件を定めなかった。収縮期血圧が90mmHg未満、または血清クレアチニン値が3.0mg/dL超の患者、血管拡張薬の静脈内投与またはジゴキシン以外の強心薬を必要とする患者は除外した。

 308人(平均年齢66歳、27%が女性、25%が黒人)を登録。これらの患者はハイリスクの特徴を複数持っていた。74%が過去12カ月間に心不全入院歴を有し、血清クレアチニン値の平均が1.5mg/dLと中等度の腎機能不全を示し、NT-proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)の平均は7439pg/mLだった。駆出分画の平均は35%で、50%以上だった患者は全体の27%だった。

 試験は2×2ファクトリアルデザインのダブルダミー設計になっており、308人の患者を、フロセミド低用量(それまで経口投与されていた1日用量と同量)または高用量(それまで経口投与されていた1日用量の2.5倍)に1対1で割り付け、それぞれをさらに2分して、12時間ごとのボーラス静注、もしくは持続静注に割り付けた。

 48時間後に臨床反応を指標として用量を調整した。反応が十分でない場合には1.5倍まで増量し、用量過剰と判断された患者については静脈内投与を中止し、オープンラベルで経口投与した。

 有効性の主要エンドポイントは、患者自身がVASスケールを用いて評価した全般的な症状とし、割り付け時、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後に評価を行い、患者ごとに、横軸を時間、縦軸をVASスケールとしたグラフに6回の測定値を表して曲線下面積(AUC)を算出、比較した。安全性の主要エンドポイントは、ベースラインから72時間までの血清クレアチニン値の変化に設定した。

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