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Lancet誌から
性的に活発な男性はHPV感染率が高く感染期間も長い

ヒトパピローマウイルスHPV)の性器への感染は、男性の性器疣贅尖圭コンジローマ)や癌の原因になる。また、感染男性から女性への感染は容易に起こるため、女性に様々な病気をもたらす可能性がある。米H Lee Moffitt Cancer CenterのAnna R Giuliano氏らは、男性のHPV感染の実態と自然経過について調査し、性的に活発であることが感染の危険因子であり、自然排除にかかわる要因でもあることを明らかにした。詳細は、Lancet誌2011年3月12日号に報告された。

 性行為によって女性が発癌性の血清型のHPVに感染することを防ぐために、性的に活発になる前の女性を対象にHPVワクチンの接種が行われている。一部の国では男性に対する接種も始まっているが、実際には男性のHPV感染の実態は明らかになっておらず、効率の良いHPV関連疾患予防戦略の構築を難しくしていた。そこで著者らは、男性の性器HPV感染について血清型ごとの感染率を調べると共に、自然排除にかかる時間を明らかにして、感染や排除にかかわる要因を同定しようと考えた。

 HPV in Men(HIM)スタディは、05年7月から09年9月に、ブラジルのサンパウロ、メキシコのクエルナバカ、米国南フロリダの一般集団、大学関係者、ヘルスケアシステム加入者を対象に18~70歳の男性を募集した。陰茎癌または肛門癌の既往がない、HIV非感染、性器または肛門疣贅の診断歴がない、HPVワクチン未接種、性器に症状が見られない、性行為感染症に対する治療を受けていない、などの条件を満たした4074人を登録した。聞き取り調査を行って、過去から現在に至る女性パートナーの数、過去3カ月間に交渉を持った女性の数、過去から現在に至る男性パートナーの数、過去3カ月間に交渉を持った男性の数などを明らかにした。

 ベースラインと6カ月ごとの受診時に、陰茎の冠状溝、亀頭、陰茎体、陰嚢から標本を採取し、PCRを行ってHPV感染の有無とウイルスの血清型を調べた。

 この論文が分析対象にしたのは、初期に登録された1159人の男性(追跡期間の中央値は27.5カ月)からなるサブコホートだが、フルコホートと比較したところ、人口統計学的特性、性行動の特徴などは同様だった。

 サブコホートの平均年齢は32.1歳で、75%が非喫煙者、42%が包皮切除を受けていた。ベースラインのHPV感染陽性者は50%(584人)、残りの50%は陰性だった。

 追跡期間中に新たに性器HPV感染が検出されたのは311人で、新規感染率は1000人-月当たり38.4(95%信頼区間34.3-43.0)だった。

 発癌性HPVの新規感染率は1000人-月当たり22.2(19.8-24.9)。血清型の中で検出率が高かったのは16型(1000人-月当たり4.4、3.6-5.3)、51型(4.5、3.7-5.5)、52型(4.4、3.6-5.4)、59型(3.9、3.1-4.7)だった。

 非発癌性HPVの新規感染率は1000人-年当たり27.8(24.8-31.0)、血清型は6型(3.6、2.8-4.4)、62型(3.7、2.9-4.5)、84型(5.0、4.1-6.0)、CP6108型(4.1、3.3-4.9)の感染が多かった。

 あらゆるHPV、発癌性HPV、非発癌性HPVの累積感染リスクは年齢群(18~30歳、31~44歳、45~70歳)にかかわらず同様だった。

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