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KUROFUNetから日本へ
原発事故への日本政府の対応に不信

2011/03/23

 巨大地震と大津波による甚大な被害、さらには原子力発電所の非常事態と放射線漏出。海外の人々はこれだけの被害が出ているにもかかわらず日本人は規律と礼儀をもって対処しているという印象を持っており、先の大戦での経験が今の日本を支えているのだと理解されているようです。

 「おそらく日本国民は、精神的には今の状況から立ち直るだろう。しかし、日本経済の困窮という問題も含め、今後を大きく左右するのは政府の復興政策だろう」という声も聞こえるようになってきました。地震・津波災害への救援活動は各方面の努力で可能な限り迅速に行われているように見受けられます。しかし、福島原発を巡る政府や東京電力の対応により、日本国民さらには海外にまで混乱を起こしたことは否めないと思います。

 結局、海外では、日本側から提供された情報に米軍の独自測定データを加味したアメリカの判断が広く受け入れられているようです。日本の担当機関がやっていることは全く信用されていないというか、日本側の英語でのコミュニケーションが下手というか…。「(日本政府は)自国の汚点を最小限にしか公表しない」といった批判も聞かれます。

 フランスでは、福島原発の事故は国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル6と言われていますが、日本ではレベル5です。この食い違いが、認識の甘さと取られている可能性もあります。日本国内から見ると海外の過剰反応と思われるかもしれませんが、日本が信頼のおける正確な情報を出せなかった結果なのかもしれません。

 まだまだ窮状は続くと思います。しかし、思いやりを持って助け合いながら頑張れば、必ず復興できると信じています。

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著者プロフィール

佐野 潔

パリ・アメリカン病院

1978年大学卒業後、横須賀米海軍病院、大阪八尾徳洲会病院を経て、83年に渡米。ミネソタ大学医学部地域家庭医療科にてレジデンシーを修了後、ミネソタの農村で15年間、開業医として家庭医療を提供。その後99年よりミシガン大学にファカルティーとして移り、日本人診療、学生・研修医の教育に従事する。2006年よりパリのアメリカン病院にて再び開業医として日本人・米国人を対象に家庭医療を提供している。

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