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添付文書の行政指導に対する国の責任への判断分かれる
イレッサ訴訟、国とアストラゼネカに賠償命令

 非小細胞肺癌治療薬のゲフィチニブ(商品名イレッサ)の副作用で死亡したなどとして、遺族や患者が国とアストラゼネカに対し損害賠償を求めていたイレッサ訴訟で、東京地方裁判所(松並重雄裁判長)は3月23日、国とアストラゼネカに対し合計1760万円を支払うよう命じる判決を出した。同判決は、国への賠償請求を棄却した大阪地裁の判決(関連記事:2011.2.26「イレッサ訴訟、アストラゼネカへ約6000万円の賠償命令」)とは異なる内容となった。

 争点となったのは、2002年7月のゲフィチニブ承認時、間質性肺炎への注意喚起が十分であったかどうか。アストラゼネカは承認時の添付文書で、「重大な副作用」欄の4番目に頻度不明の副作用として間質性肺炎を挙げていた。

 東京地裁の判決では、承認時の添付文書はゲフィチニブを使用する医師などに対し間質性肺炎の危険性を認識させるのには不十分だったとし、製造物責任(PL)法上の指示・警告上の欠陥があったとアストラゼネカの責任を認めた。さらに、承認時の添付文書について国は必要な行政指導を怠ったとして、国の責任についても認めた。大阪地裁は判決で、承認前後の安全性確保についての国の対応は、著しく合理性を欠くものとはいえないとし、国への賠償請求を棄却している。国が添付文書の行政指導の責任をどこまで負うべきかについて、両地裁の判断が分かれた格好だ。

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