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タミフルと精神神経症状の関連
タミフル、アセトアミノフェン使用者でせん妄が1.5倍に
元の研究班が廣田班解析結果を再解析

 2006/07年シーズンのインフルエンザ流行時におけるリン酸オセルタミビル(商品名タミフル、以下オセルタミビルと略)およびアセトアミノフェンの使用と、精神神経症状の発生との関連について、もともと調査を計画した研究グループ(次ページ【調査の主な経緯】を参照)による再解析の結果が、2月に発行された日本薬剤疫学会誌に発表された(Jpn J Pharmacoepidemiol. 2011; 15: 73-92. http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpe/15/2/73/_pdf/-char/ja/)。それによると、オセルタミビル、アセトアミノフェン共に、使用者は未使用者に比べて、せん妄の発生が1.5倍程度に高まっていたことが分かった。

 解析対象は、06/07シーズンに全国の協力医師によってインフルエンザと診断された18歳未満の患者、9392人。せん妄評価尺度(32点満点)で16点以上だった場合に「せん妄あり」と判断した。対象者の内訳は、せん妄あり101人(1.1%)、せん妄なし9288人(98.9%)、時間が範囲外ないし不明3人(0.0%)だった。薬剤の使用は、オセルタミビル7382人(78.6%)、アセトアミノフェン4903人(52.2%)だった。

 薬剤を使用していた人のせん妄発生のハザード比を、使用していなかった人を基準として多変量解析で求めたところ、オセルタミビル1.51(95%信頼区間 0.95-2.40、P=0.0840)、アセトアミノフェン1.55(同 0.98-2.44、P=0.0613)で、統計学的有意ではないものの、両剤ともせん妄発生のリスク増大と関連する傾向が見られた。

 年齢別のせん妄発生のハザード比を、0-2歳を基準として多変量解析で求めたところ、オセルタミビルでは3-5歳1.31(同0.51-3.36)、6-8歳2.40(同1.00-5.77)、9-11歳3.19(同1.32-7.71)、12-14歳0.68(同0.21-2.25)、15歳以上0.72(同0.09-6.01)だった。オセルタミビルの添付文書で使用を控えるよう記載されている「10歳以上」より若年者でハザード比が高かった。アセトアミノフェンも同様に、3-5歳1.29(同0.50-3.32)、6-8歳2.43(同1.01-5.84)、9-11歳2.82(同1.15-6.89)、12-14歳0.67(同0.20-2.22)、15歳以上0.75(0.09-6.25)だった。

 薬剤を使っていてせん妄が発生した人について、服用からせん妄発生までの時間は、オセルタミビル(71人)では6.3時間(中央値)で、アセトアミノフェン(50人)では13.3時間(中央値)。オセルタミビル使用者で、より短時間だった。

 研究グループではこれらの結果について、薬剤の使用によりせん妄発生のリスクが増大する可能性を示唆するとしているほか、10歳未満でも事故につながりかねない異常行動の発生率が高い可能性があることに留意する必要があると述べている。論文には研究の着手にいたる状況から報告までの経緯が付録として追記された。なお、筆頭著者である統計数理研究所の藤田利治氏は2011年2月に亡くなったため、この論文が同氏の遺稿となった。

 東京理科大名誉教授(生物統計学)の吉村功氏はこれらの結果について、「オセルタミビルとアセトアミノフェンが同程度に注意が必要であることを示唆する論文だ。オセルタミビルやアセトアミノフェンを使用する場合は、10歳未満でも常時監視し、家から出させないようにすべきだ。一方で、これらの結果をもって、オセルタミビルと異常行動との因果関係が証明されたとまでは言えず、裁判で証拠として用いるのは慎重にすべきだろう」と話している。

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