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KUROFUNetから日本へ
お見舞いと不安が混在するアメリカの空気

2011/03/25

 3月11日の朝、早い時間からオンラインケア(簡単そうな主訴の患者に限った、自宅からのオンライン診察)をやっていたところ、仲のよい看護師のサラからメール。「東京の家族は大丈夫か?」と書かれていました。

 慌ててテレビをつけて、地震と津波による大きな被害を知ることになりました。ホッケー仲間からもお見舞いのメールが来ており、日本の医療系メーリングリストでも活発なやり取りが行われているのを知りました。妻の家族からも電話で「東京の両親は大丈夫か?」と聞かれ、西東京だから大丈夫とは思いながら、念のために両親にメールを送っておきました。

 その日の午後にはオバマ大統領がかなり熱の入った臨時演説を行い、9.11以来の大惨事といった状況で最大限のお見舞いと援助を申し出るという感じでした。CNNはぶっ通しでこの大災害の報道をしていましたが、ミネソタ州のダルースでは地元の東ダルース高校とわが地元のイダイナ高校の白熱したホッケー戦が放送されており、ここばかりは普通のミネソタの3月という風情でした。翌日になっても両親からメールの返信はなく、電話もつながらないので不安に思っていたところ、ようやく返信があって胸をなで下ろしました。

 そうこうしているうちに、福島第一原発の非常事態が大きく報道され始めました。「西海岸にも放射能がやって来る」という噂が流れて町中のヨードがなくなったところもあると言われています。4月に東京を訪れる予定だった妹夫婦の家族は、成田空港では放射能汚染があるかもしれないので関際国際空港に降りようかと考えているようです。

 この文章を書いている3月17日はセントパトリック(アイルランドの聖者)の日ということで、緑色の服にクローバーを付けた人々の闊歩する中、オバマ大統領が再び臨時演説を行い、最も近しい同盟国の一つである日本への援助の必要性を強調していました。アメリカ赤十字やニューヨーク市長が義援金を呼びかけたほか、草の根の募金活動も広く行われています。アメリカ社会では今、日本への心からのお見舞いという空気がある一方で、放射能汚染の問題に対しては過剰な不安も感じられます。

 最後になりましたが、被害に遭われた方々、そのご家族ご友人に心からお見舞いを申し上げます。また、救助、復旧作業に携わっておられる方々、大変ご苦労様です。

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著者プロフィール

日比野 誠恵

ミネソタ大学ミネソタ大学病院救急医学部准教授

1986年北里大学医学部卒。横須賀米海軍病院、セントジュウド小児研究病院、ピッツバーグ大学病院、ミネソタ大学病院を経て、1997年より現職。趣味はホッケー、ダンス、旅行など。

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