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KUROFUNetから日本へ
渡独前に過ごした福島の方々が心配です

2011/03/26

 今回の東北の惨事に深く心を痛めています。東日本大震災のニュースは発生と同時にドイツ国内も駆けめぐり、地震と津波による未曽有の惨状が明らかになった翌朝からは、道ですれ違う人も含め、多くの人々からお悔やみと激励の言葉をいただきました。

 息子の通うギムナジウム(学校)でも、授業内容を変更して日本の震災と原発事故の説明がなされました。私のところには、日本に薬を送りたいという申し出がありました。また、当クリニックと同じ医療ビルに入っている放射線科医からは、一時帰国で放射線被曝を心配する人の内部被曝チェックに協力したいとの申し出をいただいています。ドイツ社会は日本の惨状に胸を痛めていると同時に、大変苛酷な状況下にあるにもかかわらず冷静な対応をされている被災者の方々に敬意を表しています。

 一方で、原発事故への懸念は強く、メルケル首相は3月14日に国内原発の稼働延長計画をしばらく凍結することを発表。欧州系航空会社の日本発着便のスケジュールも大幅に変わりました。今年は日独交流150周年だったのですが、ルフトハンザ航空の日本行き直行便はなくなり、ソウル経由のみとなりました。

 日本が重度の放射能汚染を受けたかのような誤解に基づいた報道も一部にあるようです。そのため、被災した日本に配慮するというムードも重なり、ブームだった日本食料品店や日本レストランへの客足が著明に落ちているとも聞いています。

 背景の一つには、日本の情報公開が不十分ととらえられていることがあるでしょう。こちらのニュースでは、日本の公的機関が発表した放射線の値は素直に受け止められず、本当のところはどうなのだろうかという懸念がみられ、一部の過剰反応に拍車をかけているような気がします。さらに、日本政府の対応の遅れ、具体的なプラン(ロードマップ)を示していないことを指摘する声もあるようです。

 私の一家は、渡独前の数年間を自然の美しい福島で過ごしました。当時の患者のみなさん、ご活躍されていた先輩や同僚の方々の安否がとても気になっています。診察室に「日本頑張れ」という言葉を掲げて仕事をする毎日です。

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著者プロフィール

馬場 恒春

ノイゲバウア‐馬場内科クリニック(デュッセルドルフ)

1971年、カリフォルニア州へAFS交換留学。1978年、弘前大学卒業。弘前大学、ドイツのハインリヒハイネ大学(フンボルト基金研究員)、国立国際医療センター臨床研究部(流動研究員)、リューベック大学(フンボルト基金研究員)、東京大学、北里大学、福島県立医科大学の各研究室でお世話になった後、2003年に渡独。現在はデュッセルドルフ市内のノイゲバウア馬場内科クリニックに勤務。専門は内科一般。趣味はサッカー応援、大相撲観戦。

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