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大震災の現場から Vol.19
避難所の中で“新しい町”を作ろうとしている
ボストンから気仙沼に飛んだ看護師からの報告

2011/03/29
原田奈穂子(日・米看護師)

 2011年3月11日に宮城県沖で発生した東日本大震災を受け、医療支援NPO「TMAT(http://www.tmat.or.jp)」(注)からの派遣メンバーとして、ボストンから臨床医3人とともに被災地入りした看護師、原田奈穂子氏からの報告を紹介する。原田氏は日本で看護師の経験を積んだ後、渡米して看護師資格と修士号(University of PennsylvaniaのNPプログラム)を取得。現在はBoston College看護学部博士課程に在籍中である。

編集部注:TMATは、阪神・淡路大震災後に徳州会グループの医師らが作ったボランティアグループを発端として2005年に発足した医療支援NPO。国内外で災害医療や医療支援活動を実施している。


 3月13日にボストンを出発し、成田空港に到着後、救急車で仙台徳洲会病院に直行。翌14日から18日まで、気仙沼市立階上(はしがみ)中学校にある仮設診療所で約1200人の方々のケアをさせていただきました。1200人というのは、階上中学校体育館の避難所に避難されている方、徒歩で受診される方、往診先の方の合計です。

 3月18日の時点で、階上地区のライフラインは復旧しておりません。軽油を燃料とした発電機で電気を確保し、水はタンクに貯めたものを使用しており、洗濯については、被災者の方は近所の川でしていました。ガスは通っていませんでした。食料やその他の救援物資は、自衛隊や赤十字から届いており、さらに、半ば自給自足の土地柄だったことが幸いし、最低限のものは確保できていました。

 家の倒壊を免れた人も、家での自炊は不可能なので、食糧の配給を受けに中学校にいらっしゃる方が多いです。なかには、カセットコンロを使って煮炊きを個人でされている方もいます。トイレは、もともと下水が整備されていない地区なのが幸いし、自宅のいわゆる“ぼっとん”トイレを利用できています。

 健康面の問題としては以下のようなものがあります。

慢性期の患者さんの継続投薬
 かなりの数の病院が機能を回復しつつありますが、継続処方されるのは、血圧治療薬、抗凝固薬、インスリンなど、どうしても継続が必要な薬に限られている状況です。
小児科
 子供の受診希望が多く、今後小児科を診られる医師やNP(Nurse Practitioner)、PA(Physician Assistant)が必要になってくると思われます。
その他
 インフルエンザ、長期避難生活による疲労やストレス、倒壊した家屋などの撤去作業に起因する怪我、精神的な問題も、今後起きてくると予想されます。

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