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Ann Intern Med誌から
CKD患者の降圧、“低め”で利益があるのは顕性蛋白尿がある場合
3件の無作為化試験の系統的レビューの結果

慢性腎臓病CKD)患者に対する最適な血圧目標値は明確になっていないが、ガイドラインは、CKD患者の血圧の目標値を合併症がない高血圧患者より低く設定している。だが、CKD患者により低い血圧目標値を設定することで、本当に臨床利益が得られるのだろうか。この疑問に基づき系統的レビューを行った米Tufts大学医学部のAshish Upadhyay氏らは、140/90mmHg未満を目標とした場合と130/80mmHg未満を目標とした場合とで、転帰に有意差はほぼ見られないこと、ただし顕性蛋白尿の患者については、目標値を低く設定することでいくつかの転帰が有意に向上することを示した。論文は、Ann Intern Med誌電子版に2011年3月14日号に掲載された。

 CKD患者の血圧の目標値がより低く設定されているのは、心血管リスクと腎不全リスクが高いからだ。蛋白尿はこれらのリスクをさらに高めることから、一部のガイドラインは、蛋白尿のある患者にはさらに低い目標値を用いるよう指示している。

 著者らは、より低い血圧値を目指すことが患者に利益をもたらすかどうかを明らかにするため、無作為化試験を対象に系統的レビューを行った。 

 MEDLINEとコクランセントラルに01年7月から11年1月までに登録された研究と、04年にNational Kidney Foundation Disease Outcomes Quality Initiativeによるガイドライン作成時に行われた系統的探索で同定された研究(MEDLINEに66~02年7月に登録された研究を含む)の中から、高血圧でCKDだが透析は受けていない成人患者を登録し、血圧の目標値を低く設定した場合と高く設定した場合の臨床転帰への影響を比較していた無作為化試験を探した。さらに、それらの中から、割り付け群1群当たり50人超の患者を登録し、1年以上追跡して、死亡、腎不全、心血管イベント、腎機能の変化、糸球体濾過量(GFR)変化率、使用した降圧薬の数、有害事象などについて報告していた研究を選んだ。

 3件の無作為化試験(MDRD試験、AASK試験、REIN-2試験、計2272人の患者を登録)に関する8本の報告が条件を満たした。MDRDとAASKについては、無作為化試験終了後の長期追跡結果も報告されていた。3件とも、ベースラインの蛋白尿のレベルに基づいて患者を層別化し,サブグループ解析を行っていた。

 3件の試験自体の方法論的な質は良好だった。追跡研究とサブグループ解析の質は中等度と判定された。

 条件を満たした試験が3件しかなく、試験間に不均質性が認められたため、メタ分析は行わなかった。

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