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厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」
医師の働き方改革で優先すべきは「睡眠時間確保」

11月9日の検討会の様子。

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」が11月9日に開催され、厚生労働行政推進調査事業費「病院勤務医の勤務実態に関する研究」分担研究者である順天堂大学公衆衛生学講座教授の谷川武氏へのヒアリングが行われた。週の労働時間がより長いグループでも、1日6時間以上の睡眠時間を確保できていればストレス反応・抑うつ度に有意差はなかったことから谷川氏は、労働時間の制限よりも、睡眠時間の確保に留意すべきで、「十分な睡眠のためには、連続勤務時間制限と勤務間インターバルの規制を行う、もしくは当直時間帯などでの睡眠時間を確保することが必要だ」と指摘した。

 谷川氏は、米国の21~38歳の健康成人48人を対象に睡眠制限と持続的な注意力との関係を調べた試験を紹介。慢性的な睡眠不足の状態にある場合、たとえ眠気を感じなくても、実は客観的な覚醒度(持続的な注意力)は低下し続けることを説明した。例えば、4時間未満睡眠を2週間ほど続けると、全く眠らず2日を過ごした人と同じ程度まで持続的注意力が低下する。一方、全く睡眠を取らない場合は強い眠気を感じるのに対し、4時間未満や6時間未満の睡眠の場合には主観的な眠気は強くならず、軽い眠気を感じている状態だという。

 さらに谷川氏はタイムスタディ調査において睡眠時間・就労時間と高ストレス者・抑うつの関連を調べた結果を紹介。ストレス反応・抑うつ度は、労働時間とは有意な関連は確認されず、睡眠時間(6時間以上)と有意に関連したことを報告した。具体的には、「就労時間が週80時間以上かつ睡眠時間が6時間以上群」の抑うつリスクは、「就労時間が週80時間未満かつ睡眠時間が6時間以上群」と比べて1.92倍で有意差は認められなかったが、「就労時間が週80時間未満かつ睡眠時間が6時間未満群」は3.94倍、「就労時間が週80時間以上かつ睡眠時間が6時間未満群」では4.13倍といずれも有意差が確認された(P<0.05、図1右)。この結果について、谷川氏は「たとえ週80時間以上働いていても、6時間以上の睡眠時間を確保できていれば有意差はなかった。労働時間制限よりも、睡眠時間の確保に留意すべきと考えられる」と指摘した。労働時間と抑うつ障害との関連に関するシステマティック・レビューでも、労働時間と抑うつ障害との関連は明確ではなく、長時間労働が抑うつ障害に及ぼす影響は確定的ではなく、無視できないとしても小さいと考えられているという。

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