ホンダが、ハイブリッド車(HEV)技術の「選択と集中」を進める。1モーター式に加えて、3モーター式の開発を中止したことを明らかにした。3種類あったHEV技術のうち、小型車に採用を広げる2モーター式だけを残す。量産規模を増やしてHEVのコストを下げ、先行するトヨタ自動車を追いかける。
パワートレーン開発を統括する本田技術研究所常務執行役員の松尾歩氏が、2019年7月に開催した技術説明会の場で日経 xTECHの質問に答えた。
ホンダは2019年5月、2モーター式HEV技術「i-MMD」を小型車の次期「フィット」に採用すると正式発表した。併せて、現行フィットに搭載する1モーター式「i-DCD」の開発を中止すると事実上明かしていた。
一方で3モーター式の方針が見えていなかったが、1モーター式と同様に開発を中止したことを初めて話した格好である。「2モーター式に1本化して、選択と集中を進める」(松尾氏)。
2モーター式を残す2つの理由
3モーター式の「SH-AWD」は、高性能スポーツ車「NSX」と上級セダン「レジェンド」に採用してきたHEV技術である。
例えばNSXは、車両の前にモーター2基、後ろに排気量3.5LのV型6気筒ターボガソリンエンジンとモーター1基を配置する構成で、高い運動性能を実現する。3基のモーターで「走る」だけにとどまらず、「曲がる」「止まる」ことまで制御する。
操縦安定性を大きく高められる一方で、モーター数が多くてコストは高くなる。NSXやレジェンドといった高価な車種での採用にとどまり、普及価格帯の車両に広げられていなかった。
なお、ハイブリッド方式としてのSH-AWDの開発は中止するものの、その開発で培った4輪への駆動力配分技術は今後も残す考えである。
ホンダが3種類のHEV技術のうち2モーター式のi-MMDを選んだのには、大きく2つの理由がある注)。1つは、HEV技術で先行するトヨタを上回る性能を狙える技術であること。燃費と動力、コストの基本性能で優位に立つ可能性がある。
もう1つが、「燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)との親和性が高いこと」(松尾氏)である。ホンダの2モーター式は、ガソリンエンジンを主に発電に使うシリーズ方式に近い構成で、大半の場面をモーターで走れる。モーターだけで走るFCVやEVに技術を転用しやすい。